ECD氏は07年に出版した著書『いるべき場所』(メディア総合研究所)のなかでそのときのことをこのように綴っている。
〈三月十九日、イラク開戦の前日、仕事を終えた僕は開戦に抗議するひとびとが集まっているというアメリカ大使館に向った。しかし、アメリカ大使館周辺の大通りから大使館に向う道の入口は全て機動隊によって封鎖されていて近付くことはできなかった。大通りの舗道では右翼が星条旗を掲げて立っていた。その余りのバカバカしさと、普段自由に通行できるはずの通りが封鎖されているということへの怒りによって僕の中でカチリとスイッチが入る音がした。今回ばかりは傍観してはいられない。デモでも何でも参加してやる、そう心に決めたのだった〉
その翌日、イラク戦争開戦当日となる03年3月20日、彼は職場のテレビでニュース映像に釘付けになる。そのニュース映像では、世界各地の人々が戦争に抗議するためデモを起こしている模様を報じていた。
そのとき、日本でも日比谷公園に集まった反戦デモ参加者がアメリカ大使館に向かっているのだが、その情報を知っていてもたってもいられなくなったECD氏は、仕事が終わるとその足でデモの行われているアメリカ大使館へ向かい、「戦争反対」のシュプレヒコールをあげたという。
このときの〈怒りによって僕の中でカチリとスイッチが入る音がした〉という状況は以後も続いていき、東日本大震災以後の反原発デモや、レイシストへのカウンター活動にも積極的に関わっていく。
そういった動きはもちろん自身の音楽にも強く反映される。前述した「STRAIGHT OUTTA 138」では原発問題を扱い、〈人が死ぬのをわかってて止めない反対すると非国民扱い/なにかに似てるとにかく狂ってる/67年前のボロ負けで終わったはずのあの戦争を続けたかった奴らの夢/それが原発だ間違いねえ/だからもうとっくの時代遅れ/死に損ないジジイのノスタルジー(勃たなくなったチンポの代わりの)/シンボルそれがいきりたつ原子炉/そんなもんに付き合ってられるか/署名投票デモンストレーション/言うこと聞かせる番だ俺たちが〉とラップしている。
また、13年に発表した「The Bridge 反レイシズムRemix」では、タイトル通り差別について踏み込み、〈足すくむ震え止められない/わめき声「殺せ叩き出せ」って聞いて/泣き出すの無理ねーだって自分が今/大好きなアーティストがスターがアイドルが/何人かどーかでそんないわれかた/どんだけ悲しい悔しい恐ろしい/そいつがレイシズムそしてヘイトスピーチ/こんな世界があっていいわけがねー/いいわけがねー/いいわけがねー〉と歌っている。