村本の弟が現役の自衛隊員であることはよく知られているが、その立場から現在の状況を見て彼は「安保法制や憲法改正の議論を聞いていると、隊員の命をカードのように扱っている気がして」と憤る。
その象徴が、前述した北朝鮮問題に対する安倍首相の態度だろう。彼はひたすら圧力をかけることだけに終始しているが、そもそも政治家の仕事とは、対立が武力衝突に発展しないようあの手この手で交渉することである。ただ単純に相手を侮蔑して威勢のいいことを言うだけなら幼稚園児でもできる仕事だ。
村本は、安倍首相が自衛隊員の命を「カード」としか思っていない象徴として、京都の海上自衛隊舞鶴基地で隊員に対し「国民の安全確保のため万全の態勢をとってくれました」とスピーチしたことを挙げる。
「あれは安倍さん、「みなさんの命を落とすことがないよう一生懸命に努力します」と言うのが筋でしょう。「私の誇りであります」なんて言ってる場合じゃない」
また村本は、金を釣り餌にひどい目にあわされている人々として、原発周辺に住む人たちについて語る。村本は福井県おおい町の出身で、近くに大飯原発がある。そして村本自身、売れなかった時代に、実家から原発で働くよう電話がかかってきたこともあるという。
「夢のエネルギーだ、出稼ぎに行かなくてすむんだとうまいこと言われて、貧しい地域に原発が置かれてきた。それで町の基盤もできた。だけど生活するのに必死だから、原発がどれだけ危ないか、事故でどんな被害をもたらすか、考える余裕がないんです。依存させておいて、依存から抜け出すにはリハビリが必要という視点がいまの議論にはないし、生活している人の姿が見えているのかなと思う」
今回の選挙戦では安倍首相の口から「こんな人たち」級の失言は飛び出さなかったものの、遊説先を告知しないステルス演説をしていたことが象徴的なように「丁寧な説明」はどこへやら、自分とは違う意見の人とはまともに議論しようともせず嘘とはぐらかしですべてをごまかそうとする態度はなんら変わることがなかった。