松尾貴史「いつから安倍さんが国民統合の象徴になったんだ?」
しかし、なぜ彼は、ここまで政権へ疑問の声を投げかけるのか。北朝鮮問題などをあげてこのように語れば、官邸とメディアの煽りを真に受けたネトウヨから「いい年した大人がそんなお花畑思想でどうする」などという言葉が投げつけられるのは目に見えている。それは、本業である芸人としての活動を考えれば、マイナスな面しかないだろう。
ただそれでも、星田が為政者に対し疑問の声をあげるのは、それこそが「大人」だからである。どう考えてもおかしいと思うことを唯々諾々と受け入れて、奴隷のようになっている姿を子どもたちに見せるのは、あるべき大人の態度ではない。星田は前掲インタビューでこのように語る。
「僕らに何ができるかというと、大人として思っていることをちゃんと言う姿を子どもたちに見せんとあかんと思うんです」
本稿冒頭であげたマツコ・デラックスや水道橋博士の例をあげるまでもなく、こういった発言をすればネット、特にツイッターのアカウントには口にするのもはばかられるような罵詈雑言が雪崩のように押し寄せる。
そんな炎上に日常的にさらされているタレントが松尾貴史だ。彼は先日も自身のツイッターに〈「金持ち喧嘩せず」という諺があるが、近隣の国が狼藉を働きそうだというときに、「対話は不要、圧力あるのみ」と、あわよくば争いを誘引しようという言動は、憲法を変えるための下地作りかと勘繰りたくなる。なぜ、「まぁまぁ」となだめる手間を惜しむのか。惜しんでいるのではなく煽っているのだが〉と書き込み、例のごとくネトウヨから「お花畑思考」などの中傷を受けていたが、そんな彼は「炎上」と日常的に接して感じてきたことを、ウェブサイト「政経電論」でのインタビューでこのように語っている。
〈「レイシズムはダメですよ」って書いたら“在日”だと言われるし、安倍首相に反対すると“反日”って言われる。いやいや、いつから安倍さんが国民統合の象徴になったんだって、本当に不思議でしょうがないですよ〉
安倍=日本などというネトウヨたちが描く図式は明らかに意味不明だが、それはともかくとして、これだけ米軍基地に傷つけられている沖縄をあっさりと見捨ててアメリカに隷属する首相の姿勢こそ日本を貶めていると思うが、なぜ安倍信者はそのように考えないのだろうか。
星田や松尾らベテランから中堅の芸人・タレントの姿勢に、星田の事務所の後輩であるウーマンラッシュアワー村本大輔も負けてはいない。村本といえば、8月11日放送『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に出演。「国民には国を守る義務があると思う」と発言した田原総一朗に対し、「絶対に戦争に行くことがない年寄りに言われてもピンともこないわけですよ。絶対行かないじゃないですか」と反論したことが話題となり、ネトウヨから大炎上させられたのは記憶に新しいが、彼はそんなもので怖じ気づくような人間ではない。村本は、「週刊女性」(主婦と生活社)2017年10月31日号に掲載されたインタビューで引き続き踏み込んだ発言をしている。