『23』では加計問題についても食い下がった。対する安倍首相は明らかに苛立ったように質問をさえぎって、「国家戦略特区ワーキンググループの八田(達夫)さんや原(英史)さんは『プロセスに一点の曇りもない』と証言した」「加戸守行前愛媛県知事も『行政が歪められたのではなく歪められた行政が正された』と明確に説明している」、さらには「そういう証言も報じていただかないと」などと例のネトウヨが得意とする“報道しない自由”の話にすり替えた。
しかも加計孝太郎理事長に会見をするよう働きかけないのかと問われたのに対しても、こう答えた。
「加計さんの会見が必要というなら、加戸さんが誠実に証言しているのだから、報じていただきたい」
加計氏の説明を訊きたいと言っているのに、なぜ加戸氏の証言の話になるのか。安倍首相のネトウヨ脳は重々承知だが、一国の総理大臣が公共の電波でネトウヨと同じことをがなりたてるのだから、頭がクラクラしてくる。
本サイトでは何度も指摘してきたことだが、念のため言っておこう。加計問題の本質は、加計学園の獣医学部新設が認められたプロセスに不正や恣意性があったかどうかを検証することにある。そして、八田氏や原氏はプロセスの透明性をアピールするが、実際には、2016年6月、国家戦略特区WGが愛媛県と今治市からヒアリングをおこなった際、加計学園の幹部3名が同席していたにもかかわらず、政府が公開し、「透明性」の根拠とした議事要旨には、そのことが伏せられていた。さらに、発言内容を一部削除することで、発言主旨を真逆に書き換えるという議事録の改竄まで行われていたことも明らかになっている。
また、与党参考人として答弁した加戸氏も、本人が「(安倍首相の)応援団の一員」と自認していたように、前愛媛県知事として加計学園側にくっついて、政府に陳情していたにすぎない。しかも、これまで10回以上も認められてこなかった加計学園の今治獣医学部新設がトントン拍子に進んだのは第二次安倍政権以降のことだが、加戸氏が知事を務めたのは2010年まで。ようは、安倍政権での特区指定の行政プロセスに、加戸氏はまったくタッチする機会もなければ、その内実を知る立場でもない。
しかも、加戸氏は閉会中審査で口を滑らし、「有識者会議の判断と、内閣府のあるいは虎の威を借りるような狐の発言を用いてでも強行突破していただいたことは、私は大変よろこんで今日にいたっています」と、狐=内閣府が虎=安倍首相の威を借りて獣医学部設置を突破したといような、不正をほのめかす発言までしている。ようするに、安倍首相が『23』で主張した“八田氏、原氏、加戸氏の発言がすべてを物語っている”との話はとんだデタラメであり、国民を欺く詐術にすぎないのだ。まったくどちらが「詐欺師」なのか。