2012年に、JASRACと音楽業界のあり方に疑問を抱いた作曲家の穂口雄右氏が、自身で作詞と作曲と編曲を手がけたキャンディーズの「春一番」、「夏が来た!」をJASRACの管理下から外し、自身で管理することを発表。これにより一部のカラオケ会社で配信が停止になる騒動があったが、これも「包括契約」の制度ゆえに起こったことである。
今回のファンキー末吉氏の行動は、放送の分野だけでなく、ライブハウスなどの音楽演奏の現場においても、包括契約の問題をあぶりだしたといえるだろう。
しかし、当のJASRACにどれほどの危機感と問題意識があるのかは疑問だ。
周知の通り、現在JASRACは、ヤマハ音楽教室などの音楽教室からも著作権料を徴収しようとしている。これに反対するヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などの企業や団体は「音楽教育を守る会」を結成。支払義務がないことを確認するため東京地裁に提訴している。
また、こういった近年のJASRACの強欲さが現れた象徴的な事件が、前述した京都大学の入学式においてなされた山極壽一総長の式辞に、ボブ・ディランの代表曲「風に吹かれて」の歌詞の一部が引用されているとして、JASRACが大学側に対し楽曲使用料が生じると指摘した事件だろう。この件に関しては、多くのメディアに取り上げられて問題とされた結果、JASRAC側はあくまで引用の範囲内であるとして徴収はしない方針を示すのみに終わったのだが、この騒動は、JASRACが日頃からとっている強引な徴収のやり口を我々に認識させた。
このように立て続けに炎上する一方、JASRAC側に丁寧に説明しようといった傾向は見えない。
JASRAC会長で作詞家のいではく氏が「週刊文春」(文藝春秋)17年7月20日号の取材に応じているのだが、音楽教室の問題について記者から「音楽文化の根っこを弱らせると批判されている」と質問されると、彼はこのように答えたのだった。
「音楽文化の振興を、JASRACの徴収が阻害するみたいな考え方はおかしいでしょうって! 逆に言えばね、教室の方が積極的にそういうこと(著作権)を教えてクリエイターを増やし、日本のいい楽曲をたくさん生んでいくことが、やっぱり音楽文化の振興に必要なんじゃないかと思いますけどね」