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うつは心の風邪じゃなく心のガンだ! 田中圭一、内田樹、大槻ケンヂ…作家たちが語るうつとの向き合い方

〈それは仏教の考え方をとり入れた治療法で、「不安」も「葛藤」もなくすことはできない。人間生きていく限り、老いも病気も死もさけられない。だから、「不安」はあるがままにすておいて、今自分がすべきことをすればいい。そのうえで、成功しても失敗してもその人生はまちがいではない。ここでボクは自分を俯瞰する視点を持てるようになって、一気に気が楽になりました。「不安」は消えることなく、時々ちょっかいを出してくる困った存在だけど、いっしょに歩くことが可能なヤツだ──そう思えるようになってきたんです〉(筆者の判断で句読点のみ付け加えた)

『うつヌケ』では、巷間よく言われる「うつは心の風邪」という表現に強く異を唱えている。うつは風邪なんて生易しいものではなく、「うつは心のガン」と断言する。風邪のようなものだと認識してしまうと、「風邪ぐらいで会社は休めない」と頑張ってしまうが、その頑張りが良くないのだ。ガンが分かってもまだ頑張って出社しようとする人はいないし、また、ガン患者に出社を強要する人間もいないだろう。うつとは最悪の場合は死にいたる病であり、それほどの緊急性と深刻さをもった病である。

 だから、疲れ果てて、不安がもたげたり、自分のことが嫌いになったりしてきたら、気兼ねせずに一歩踏みとどまって休むべきなのだ。『うつヌケ』からはそういった考え方の重要さを学ぶことができる。病気で苦しんでいる人はもとより、いまは元気な人こそ一読しておくべき本だろう。

 ちなみに、吉田豪『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)でインタビューに応えているリリー・フランキーはこんなふうに語っていた。リリーはかつてストレスを抱え込み味覚障害になった過去をもっている。

「鬱は大人のたしなみですよ。それぐらいの感受性を持ってる人じゃないと、俺は友達になりたくないから。こんな腐った世の中では少々気が滅入らないと。社会はおかしい、政治は腐ってる、人間の信頼関係は崩壊してる、不安になる。正常でいるほうが難しいですよ」

 発想の転換としては、こんな開き直りもアリかもしれない。休むことも、開き直ることも悪いことではない。心身ともに健康に生きていくためには、どんどんやっていくべきことなのだ。

最終更新:2017.12.01 04:25

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