渡辺謙『誰? WHO AM I?』(ブックマン社)
芸能人が政治的なイシューにコミットすることをよしとしない空気は以前からあった。だが、この数年、安倍政権やネトウヨによるメディアへの圧力によって、その傾向はさらにエスカレートしている。
政権批判や世間の空気に逆らう発言を少しでも口にしようものなら、「芸能人のくせに政治の話なんかするな」「反日タレントをテレビに出すな」と総攻撃を受け、大炎上。テレビ局やスポンサーに抗議が殺到し、干し上げられてしまう。その結果、空気を読むのに長け、政権や強いものに媚を売るタレントばかりがテレビを席巻するようになった。
しかし、そんな状況でも、おかしいことに「おかしい」とはっきり口にし続ける勇気ある芸能人、文化人も存在する。安倍政権による改憲の動きへの批判、原発再稼働への警告、弱者叩きをするメディアへの違和感……。今年も意外な大物俳優やタレント、ミュージシャンの口から、ニュース番組さえ口にしなくなった真っ当な言葉が飛び出した。
だとしたら、リテラも、彼らにあの賞を贈らなければならない。そう。昨年から始めた「芸能人よく言った!大賞」だ。
もちろん、リテラに表彰されてもありがた迷惑だということはわかっている。炎上が広がるだけだからよしてくれ、という人のほうが多いことも知っている。
しかし、それでも勇気ある芸能人たちの名前を呼び、その発言を紹介し、讃えなければならない。そのことが、沈黙しているこの国の国民を勇気づけ、良識や正論を取り戻すきっかけになるかもしれないからだ。
ということで、今年も迷惑覚悟でお届けしよう。「芸能人よく言った!大賞」まずは前編、10位から6位、そして特別賞から!
★10位 マツコ・デラックス
世間は大評価の安倍マリオと小池百合子にいちゃもん! 久しぶりの毒舌にさすがの声
テレビやCMに引っ張りだこで、すっかり毒のなくなったマツコ・デラックスだが、今年は久しぶりに辛口発言をぶっ放してくれた。
そのひとつが『5時に夢中!』(TOKYO MX)で、リオデジャネイロ五輪の「安倍マリオ」を「突き抜けていないよね。恥ずかしいんだったらやるんじゃないよ! すぐ脱ぐんだったらやるな、断れって話。ヒゲもないし中途半端」と切り捨てたこと。
安倍批判をすれば、官邸から直接的に抗議を受けたり、応援団のネトウヨから一斉に電凸がかけられる状況、しかも、世間がマリオのパフォーマンスを大絶賛している中でのこの発言には、最近のマツコに物足りなさを感じていた往年のファンからも「さすが」という声が上がった。