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誕生から10年、「草食男子」生みの親が真逆の使われ方に怒りの告白! 流行語を保守的に誤用するメディア

「週刊プレイボーイ」(集英社)16年10月24日号

 草食男子──現在ではごく当たり前に使われているこの言葉が生まれてから実は今月で10年になる。「草食男子」なる言葉が初めて使われたのは、2006年10月13日、ウェブサイト「日経ビジネスオンライン」の連載コラム「U35男子マーケティング図鑑」のなかでコラムニストの深澤真紀氏が用いたのが初出となる。

「週刊プレイボーイ」(集英社)16年10月24日号では、「草食男子」誕生10周年を記念して深澤氏にインタビューを行っているのだが、そこで彼女から発せられたのは、本来の意味を誤解されて「草食男子」という言葉が広まってしまったことに対する悔恨と怒りだった。深澤氏はこう語る。

「戻れるなら10年前に戻ってあの原稿を破りたい。『草食男子』と呼ばれている人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 というのも、現在広く使われている「草食男子」は、その言葉をつくった彼女がもともともたせていた意味とはかけ離れたものになってしまっているからだ。

 深澤氏がもともと「草食男子」という言葉にもたせていたのは、家父長的で女性を見下す割には家事や栄養管理のスキルをもたず、麻雀やゴルフぐらいしか余暇にやることがなくてひとりっきりでも充実した人生を送っていけるような趣味ももたない、団塊・バブル世代のオヤジとは真逆の感性をもった若者たちを讃える意味だった。

「当時39歳だった私は、バブル世代や団塊世代のオヤジから否定されていた20、30代の男性たちを肯定するためにあの言葉をつくったんです。
 “草食”という言葉も、日本人に根づく仏教マインド(不殺生など)に基づいてポジティブな意味合いで採用したものでした。
(中略)
 モテることを自分の価値として、女性をトロフィー扱いするような団塊・バブル世代のオヤジたちに対して、女性をリスペクトでき、人間として対等に付き合える新しい世代の男性たちのことを正しく理解させたかったというだけなんですよ」

 しかし、この言葉はその後、180度真逆に転換。ネガティブな意味を付けられていくわけだが、その変化には二つの段階があった。一つは、「草食男子」という言葉が生まれた翌年、07年に起きる。

「ネガティブな意味合いで世に認知され始めたきっかけは、2007年に『non-no』や『an・an』といった女性ファッション誌が『私たちがモテないのは草食男子のせい』といった趣旨の特集を組んだこと。
『男子のせいじゃなくて、あなたたちももっと頑張れよ!』と思ってはいましたが、女性ファッション誌での流行語が一般に広まることはあまりないですし、ただのキャッチーな言葉として消費されて終わるはずだと思っていました」

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