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アイドルが太って何が悪い! モー娘。鈴木香音を卒業に追い込んだものとは? 体重の増減がニュースに、リバウンドで謝罪…

 とくに、彼女が猛烈なバッシングに晒されたのは、昨年のシングル表題曲「Oh my wish!」でセンターに抜擢された際だろう。なんと2カ月で9キロものダイエットをして、ネット上では「美少女に激変」と話題に。だが、プロモーション期間の最中にリバウンドしたことで、スポーツ紙やワイドショーなどでも大きく取り上げられ、前述したような心ない意見が噴き出した。結果、ズッキはブログで“謝罪”まで行っている。

〈本当にごめんなさい…。やっぱりなと思った方も多いでしょう。 鈴木香音、大リバウンドです なにやってんだ…泣 自分のペース掴めるように頑張ります〉(2015年9月23日ブログより)

 たしかにアイドルという仕事は、人の視線に晒されるものだ。しかし、どうして思春期の女の子が、体重のことで誹謗され、挙げ句こんなふうに謝らなくてはいけないのか。はっきり言って、異常な光景だ。

 だが、これはアイドル界だけの問題ではない。女性の体型に対する偏狭な視線の背後には、現在、日本社会で強まっている“痩身信仰”があるはずだ。

 実際、厚生労働省が2014年に発表したデータでは、BMI18.5未満の「やせ」に該当する成人女性の割合は過去最高の12.3%を記録。じつに女性の8人に1人が「痩せすぎ」で、なかでも20代女性の平均摂取カロリーは1628kcal。これは終戦直後の食糧難の時代を下回る数字で、厚労省も「健康な体の維持に影響しかねない」と注意を呼びかけているほどだ。

 日本の女性、なかでも若い女性ほど「痩せなければ」と強迫的に考えていることが伺えるデータだが、すでに欧米などではBMI18未満のモデルのファッションショー出演禁止の動きが進み、昨年末、フランス政府は痩せすぎのモデルの雇用を禁止する法律を可決させた。だが、日本でこのような動きは見られないばかりか、ネットメディアではダイエットに“成功”したという女性タレントを──それがいかに病的な痩せ方でも──賞賛し、逆に少しでも太ると“劣化”と書き立てる。当然、女性アイドルはつねにそうした価値観の上で論評され、厳しい視線を向けられつづけている。

 こうした痩身であることを“当然”だとして成長期の少女に強いることの異常性──。ズッキはあくまで“太ったキャラが嫌で辞めるわけではない”と話しているが、それでも、成長期の女の子に対して自己管理だのプロ意識だのを説き、追い込むことがいまの「アイドル文化」なのだとしたら、それは唾棄すべきもののはずだ。

 太っているだとか痩せているだとか、そんな基準とは関係なく、アイドルとしてのズッキは魅力に溢れていた。ダンスもキレがあり、中音域の歌声はグループ内でも特徴的。アメリカ公演ではもっとも大きな声援を浴びるほど海外人気が高く、とくにプロデューサーのつんく♂が〈鈴木力。鈴木の笑顔が9期の力です〉と絶賛するように、彼女が見せる屈託のない笑顔はまさに天性の才能、アイドルの名にふさわしいものだ。

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