つまり、「セックスをする」というシチュエーションには十分性的興奮を覚え、勃起もするのだが、膣内の刺激が日頃の床オナで得られるそれとまったく違うがゆえに、脳が性的な快感と認識してくれず、射精に至らないということだ。
そして、床オナが実際のセックスをシミュレートしたオナニーではないことが大きな要因ともいえるだろう。もしも、膣の再現を目的とした“コンニャクオナニー”に耽っていたのであれば、膣内射精障害は起こりにくいというわけだ。
間違った方法のオナニーとしては床オナ以外に、布団や枕、週刊誌などで挟んでする「挟みオナ」や、仰向けで足をピンと張った状態で射精する「足ピンオナニー」などが挙げられている。いずれも、通常のセックスとはシチュエーションがかなり異なるがゆえに、膣内射精障害になる可能性があるという。
ちなみに、膣内射精障害は外国人よりも日本人に多いとのことだが、その理由について小堀氏は、
「日本の『家では靴を脱ぐ文化』が、多少なりとも影響しているのかもしれません。日本人は畳の床に直接座り、布団を敷いて寝ます。床でゴロゴロもします。そうしたふとしたきっかけで、床オナという禁断の快感に目覚めてしまう人がけっこういるのではないか、と思うのです」
と分析している。膣内射精障害は、日本の文化が産んだ“国民病”なのかもしれない。
そして、もうひとつ、もはや“日本の文化”と呼べるほどの存在となっているAV(アダルトビデオ)が原因で射精障害になってしまうケースもある。AVを見ながらなら射精ができるが、実際にセックスをしようとしても上手く射精ができないという症例が増えているのだ。
AVによる射精障害は、エロコンテンツが身近になったことと、バリエーションが豊かになったことでもたらされていると、小堀氏は指摘する。
「今の日本は『AV天国』といってもいい状況です。街には、様々なジャンルのエロ作品が溢れかえり、ネットを巡れば無修正の類の映像も無料で手に入ります。加えて、日本のその手の作品は、工業製品などと同じでユーザーのニーズを的確にとらえた、『作り込まれた』ものが多い。日本男児は、いつの間にか『オカズに不自由しない』環境に置かれていたわけです。
そうしたバーチャルなエロの充実は、ある面で『女性の敵』です。男が、わざわざ妻や彼女とセックスしなくても性的満足を得られる状況が広がるのだから」