『泌尿器科医が教える オトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)
“草食系男子”などという言葉が定着している昨今の日本社会。セックスに積極的ではない男性が増えている現実があるようだが、その一方で性機能障害によって、上手くセックスができずに悩む男性も増加中だという。
性機能障害といえば、いわゆるEDと呼ばれる勃起障害がよく知られるところだ。神経や血管の機能不全や心因的な理由で勃起できなくなるのがEDだが、最近はそれ以外に、勃起はできるのだが射精がうまくいかないという「射精障害」の症例が増えている。
獨協医科大学越谷病院に勤務する泌尿器科医の小堀善友氏は、著書『泌尿器科医が教える オトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)のなかで、
「性機能障害、不妊症を専門として働いているドクターはそれほど多くありませんので、学会などでいつも意見交換しています。最近、われわれの共通した意見の一つとして、『射精ができない患者さんが増えてきている』ということがあります」(同書より、以下同)
と、綴っている。そして、なかでも多いのが「膣内射精障害」と呼ばれるものだ。勃起はできて、女性器への挿入も可能で、“中折れ”することもないのだが、それでもまったくイケない、という症例で、多くの場合はオナニーでの射精は可能だという。同書によれば、膣内射精障害の患者は、小堀氏が診ただけで「カルテベースで年間新患100人以上」にのぼるというのだ。
では、どういう原因で膣内射精障害が引き起こされるというのだろうか。小堀氏によると「間違った方法のオナニー」が重要なリスクファクターになっているとのことだ。
間違った方法のオナニーの代表例として、小堀氏が挙げているのが「床オナ」だ。「床オナ」とは、ペニスを床や畳、ベッドなどに押し付けたり、こすり付けたりしてするオナニーのことだが、こういった特殊な方法のオナニーに耽ることで、女性とのセックスでイケなくなる体になってしまうと指摘している。そして、その理由について、小堀氏はこう解説する。
「床オナでは、ペニスを床に押し付け、その圧迫に快感を覚えて射精します。十分に勃起しないまま、射精に至るケースもあります。でもそれは、柔らかく潤った女性の膣に挿入し、ピストン運動をすることによって得られる刺激とは、まったくの別物。同じ『創意工夫』でも、コンニャクが女性器の感触を模したものであるのとは、対照的です」