『現代用語の基礎知識2016』(自由国民社)
本サイトでは先日、「ユーキャン新語・流行語大賞」2015年のノミネート語に、「安保法制に批判的な言葉ばかりがノミネートされている!」としてネット右翼から的外れな批判が殺到したことを伝えたが、今度は、その選考の母体である『現代用語の基礎知識2016』(自由国民社)がフクロ叩きにあっている。
Amazonのレビュー欄は大炎上。12月16日現在、平均点は5段階中2点とすこぶる低評価で、31件のレビューのうち実に22のレビュアーから「星ひとつ」をつけられている。なお、14年度版は平均4.5点、13度版は3点だったが、そもそも総レビュー数自体がせいぜい十数件だったため、いかに今年度版に非難が殺到しているかが分かるだろう。
『現代用語の基礎知識』といえば、戦後まもなく創刊され、以後毎年11月頃に発刊されている長い歴史を持った本。時代性を反映させた時事語やマスコミ語などを事典的に収録し、専門家らが解説するという“言葉の年鑑”だ。「政治」「国際情勢」「経済」「科学・技術」「文化」「時代・流行」などにジャンル分けされ、今年は冒頭の特集等も含めて全部で約1500ページ。要点だけでも読み通すのに骨が折れるが、網羅的かつ詳細に近年の話題を総ざらいできることもあり、就活に勤しむ学生から文筆家、研究者、マスコミ関係者まで、愛用している人は幅広い。
なお「ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート語は、読者審査員のアンケートを参考に『現代用語の基礎知識』編集部が選出している。ゆえに、炎上騒動が飛び火したかたちだと思われるが、いざ同書のAmazonレビューを見てみると……
〈公平性も中立性も無視した内容〉
〈こんな政治的に偏った本なんて、買う価値ありません〉
〈偏った人達が作る偏った言葉に偏った説明を為されている本。判らなければクグレ、買わずに済むゾ〉
〈共産党、sealds、在日とりま朝鮮カエレ!〉
〈左翼のアジ本と化したのか〉
〈日本の日本人の為の現代用語基礎知識と言うより、過激派パヨクの方々の用語です。〉
〈70年代のテロ用語を学び何でも官邸団に参加するならどうぞ。〉
〈レビューでだいたいわかりますねwwww 左翼様専用の本だという事はよくよく分かりました。〉
などなど、批評性もへったくれもなく、ヘイトスピーチまで混じる無茶苦茶な言われよう。とりあえず“項目が左翼的に偏向している!”とクレームをつけたいことだけは読み取れるが、しかし、これらの罵詈雑言を投稿しているアカウントを調べると、そのほとんどが同書だけしか書籍のレビューをしていない。ようするに、彼らは中身までよく読まずに「政治的偏向!」「中立にしろ!」とがなりたてているものと予想される。