……それにしても、あらためて菅原氏の言葉に触れると、その勉強熱心さ、政治や社会問題を他人事にしない主体者意識の強さに脱帽させられる。同番組のディレクターを務めた加藤晋氏も、本書のなかで〈お迎えする客人が決まると、菅原さんは多くの時間を割いて、入念な予習をされました〉と菅原氏の姿勢を振り返る。
〈オンエアするときには菅原さんが聞き役になるように編集をしていましたが、収録では客人の方だけではなく、菅原さんもご自分の意見や思いをよくお話されていました。ただ、そんなときはたいてい、収録後に「今日は俺、しゃべりすぎちゃったから、俺の話はカットしておいて」「客人がいい話をしてくれたから、そこの話は絶対に切らないで残しておいてくれ」と電話がかかってきました〉
菅原氏のことを、〈客人に向ける真っ直ぐな視線は、「輝かしい経歴を持つ往年の銀幕の大スター」ではなく、みずみずしい青年のようでした〉と述べる加藤氏。氏によれば、菅原氏はこんな言葉をよく口にしていたという。
「俺はもうすぐ死んじゃうけど、このままの日本じゃ、子供や孫の世代がかわいそうじゃないか」
「今きちんとこの問題に向き合っておかないと、これからの日本がダメになってしまう」
「自分はこれまでヤクザ映画の俳優をやってきたけど、世間の人に何の貢献もしてこなかった。だから、老い先短い年齢になって、少しぐらいは人の役に立ちたいと思ったんだ。こんな地味な番組だけどね」
“文太兄ぃ”の、静かだけれど熱いこの思い。再びその声に直接触れることはできなくても、しかし、残された者は思いを引き継ぐことができる。ぜひ、この機会に菅原氏の言葉に接してみてほしいと思う。
(水井多賀子)
最終更新:2015.12.13 07:04