■さまざまな分野の専門家が都構想の危険性を警告
「大阪都構想」の危険性に警鐘を鳴らすのは藤井ばかりではない。藤井らの呼びかけによって106人(5月6日時点)の研究者たちが所見を発表(外部リンク:「大阪都構想を考える|藤井聡」)し、5月5日にはこのうちの一部が出席して記者会見が開かれた。政治学、行政学、財政学、経営学、都市計画や地方自治論から教育、歴史、環境、防災、工学に至るまで、あらゆる専門分野、政治的立場もさまざまな学者から寄せられた批判・反対論は、抜粋(外部リンク:同上)だけを読んでも壮観だ。
〈自治体政策論の立場で考えれば、今回の大阪都構想はズサンな制度設計案といわざるをえず、その政策意思決定プロセスにおいても『いいことづくめの情報操作』『異論封じ込めの政治』が行われました〉(大矢野修・龍谷大学教授/自治体政策論)
〈市民の疑問を解消し、質の高い市民意思の表明のための条件となるべき住民説明会は、「催眠商法」と揶揄されるほど、賛成誘導に偏した、法の規定にある「わかりやすい説明」とはほど遠い内容のものとなっている〉(柏原誠・大阪経済大学准教授/政治学・地方自治)
〈政治学的に分析するなら、大阪都構想とは、思い付きに過ぎない政策を否定された維新の会が、これを実現するために、権力と財源を府に、そして一人の知事に集中すること目指したものである。これを進めてきた手続きは、行政学・政治学的に考えて適正なものではなかったし、行われた説明は願望とまやかしに基づくものであった〉(木谷晋市・関西大学教授/行政学・政治学)
〈一見、民主的な印象を与える住民投票でカモフラージュしているが、今の大阪市の状況は、手続的にも内容的にも民主主義と地方自治の危機である〉(真山達志・同志社大学教授/行政学)
〈集権的な体制をつくるため、東京府・東京市が廃されて東京都・特別区がつくられた歴史的経緯を忘れるわけにはいかない〉(荒井文昭・首都大学東京教授/教育学)
〈防災・減災は選挙の票につながらないと素人政治家は判断し、今回の大阪都構想における大阪市の区割りや大阪府との役割分担において、防災・減災は全く考慮されていない〉(河田恵昭・京都大学名誉教授/防災学)
いくらでも紹介したいが、あとはリンク先で読んでもらおう。橋下は以前、「都構想を批判する有識者はいなくなった」とツイッターで豪語していたが、それは、あまりにも荒唐無稽で論外だから相手にされなかっただけで、蓋を開ければ、これだけの批判が集まったのである。逆に、橋下の側についている学者といえば、上山信一、高橋洋一、佐々木信夫といった行政組織=公務員憎しの“脱藩官僚”で、大阪市特別顧問を務める“お友達”ばかりである(佐々木は3月末で退任)。
しかし、橋下はこれだけの批判を浴びながらも、一向に反省することなく、「実務を知らない学者が批判している」といった反論を繰り返している。公務員を叩き、学者や教師を叩き、マスコミを叩き、大衆の「負の感情」を煽って自らの支持に変えてきたいつものやり方で、この住民投票を乗り切ろうとしているようだ。
しかし、有権者は今度こそ、こうした橋下の反知性主義的な詐術に騙されてはならない。「大阪都構想」などというデタラメによって甚大な被害を受けるのは、ほかでもない、大阪市民自身なのだから。
(安福 泉)
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最終更新:2015.05.15 08:06