しかし、この斎藤の気持ちは当然のものだろう。エロ俳優という称号以前に、斎藤といえばイケメン俳優とは思えぬ私生活を誇る“こじらせ系”。たとえば、芸能人・業界関係者の巣窟と化している中目黒を敵対視して“阿佐ヶ谷俳優”を名乗り、女芸人・ニッチェが主催する飲み会「阿佐ヶ谷会」に参加。売れない時期はTIMのレッド吉田に励まされ、友人を訊かれると必ずあばれる君だと答える。その態度は、芸能界におけるイケメン俳優たちの遊び方を徹底して拒否しているかのようだ。
そして、斎藤が芸能界でも特異なのは、その映画オタクぶりだ。自身も監督として映画製作を行い、昨年つくった短編はなんと国際エミー賞のデジタル部門にノミネートされているほど。もちろん映画愛も強く、好きな映画について語りはじめると斎藤の口はもう止まらない。
前述の『さんまのまんま』でも、牛乳を飲みながら「最初に好きになったのは『仁義なき戦い』とか、あのあたりの映画なんですけど」「これはタランティーノに影響を与えているのだと知って」と延々と映画を語り、戦前の日本映画にまで言及。「戦前の日本映画とかだと、“ちょんまげミュージカル”みたいな、やっぱり戦前はすごいポップな映画がいっぱいつくられているんですよ。ちょんまげでみんな歌って踊って、最後は大きな円を描いて終わるっていうね。もう、あっぱれなんですよ!」と、日本映画界の巨匠・マキノ正博の『鴛鴦歌合戦』と思しきマニア映画をバラエティ番組で堂々と紹介している。
さらに、さんまから「いまいちばん好きな映画とか、おすすめは?」と尋ねられ、斎藤は「ノルウェーの『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』」(日本では劇場未公開)と回答。いわく“除雪車アクション映画”らしいのだが、「タイトルだけ聞いてもB級ちゃう?」「それ、君しか面白くないと思うわ」とさんまも匙を投げる始末で、「映画の話めちゃくちゃ語りよるで、こいつ。タチ悪いで。ミルクだけ飲んでこんなに語られたら〜」と呆れ気味だった。しかし、斎藤はそれでも映画の話を語りつづけたのである。
そして、斎藤に対してさんまが下したジャッジは、こういうものだった。
「こいつ、モテへんわ、絶対。なんか俺、一安心やわ」
「お前、ほんまに残念やなあ。こんな顔もってて、そんな空気感もってて、(なのに)酒飲めない、映画語るとちょっとひく」
セクシー俳優でも壁ドン芸人でもなく、映画が好きすぎる残念イケメン。──このさんまの見立てが、たぶん正解なのだろう。なにせ斎藤は、小学校時代から知識よりも感性を重視するシュタイナー教育を受け、高校時代には世界各地をバックパックで一人旅。そのような貴重な体験と映画でやしなった感受性をもっていれば、突然、芸能界の軽薄な世界に染まって生きることなど、到底受け入れがたいはずだ。
だが、この残念さこそ、斎藤のほんとうの武器であるはず。たとえ壁ドン芸人として一発屋的に消費されたとしても、“こんな顔もってて、そんな空気感もってる”(さんま談)ことが貴重なのだから。ぜひこれからも、斎藤には“残念セクシー”を全面に押し出してほしいものだ。
(大方 草)
最終更新:2017.12.23 07:02