これと合わせてもうひとつ印象的なのが、お掃除シーン。掃除をする際、潔癖のリヴァイは頭に三角巾、口元から鼻まできっちり布で覆い、掃除に取り掛かる。始めはリヴァイから「全然なってない すべてやり直せ」とやり直しを命じられたエレン。しかし、それからしばらく経った後、第104期訓練兵団の同期だったジャン・キルシュタインやアルミン・アルレルトといったメンバーとともに人里離れた場所で生活することになるのだが、このときエレンにはある変化が表れているのだ。それが、引っ越してきてそうそう、ジャンやアルミンに対して言ったこのセリフ。
「お前ら…家に入る前にちゃんと埃や泥を落として来たか?」
「……まだわかんねぇのか? そんな意識でリヴァイ兵長が満足すると思うか? 今朝だってオレがお前のベッドのシーツを直していなかったらなー」
……見事に調教されてしまっているではないか! もちろん、三角巾と口元を覆う布まで完璧に再現。この間に2人の間ではどんな“調教”が行われたのか妄想する腐女子が大勢表れた。そして、作中リヴァイが命懸けでエレンを救ったのは1度や2度じゃない。たしかに、リヴァイはエレンの上司であり、監視役でもあるのだが、大事な場面では「お前は間違ってない やりたきゃやれ」「好きな方を選べ」と口にするなど、信頼し、対等にも見ている。“巨人を駆逐する”ことだけを考え、突っ走ろうとするエレンを上手くコントロールしながらも「エレンには… 死に物狂いになれる環境が相応しい」と、彼のことをきちんと理解した発言もする。単なる上下関係だけでなく、この信頼関係が腐女子センサーに反応したのではないか。
さらに、エレン以外にもリヴァイのお相手として人気のキャラがいる。それは、調査兵団の団長で、リヴァイの上司であるエルヴィン。そもそも、リヴァイを調査兵団に引き入れたのが彼なのだ。隊員からも「リヴァイ兵長があれほど信頼してるくらいだからね」と語られるほど2人の仲は深いものらしく、リヴァイもエルヴィンの指示には「お前の判断を信じよう」と素直に従う。腐女子は関係性に萌えるものだが、こういった物語に描かれないキャラクターの人生や過去、“それまでの話”に思いを馳せる生き物でもある。
これほど妄想をかき立てるリヴァイは、「人類最強の兵士」というだけでなく、腐女子的にも魅力的で、とてもよくできたキャラクターなのだ。
こうしたあまりの腐人気ゆえに、映画にリヴァイが登場しない理由として、「腐女子に叩かれるのが怖くて、ビビって逃げた」という説が流れているのだろう。たしかに、人気マンガを実写化した際、原作人気が高ければ高いほど、イメージとのギャップで原作ファンから総スカンを食らうことは少なくない。
でも、いくら『進撃の巨人』が腐女子に人気だったとしても、これはBL作品でもなんでもない。腐女子の意見くらいで、重要キャラの登場をなくしたりするだろうか。リヴァイは人気ナンバーワンのキャラというだけでなく、主人公のエレンを守り、導く存在で、物語上なくてはならない存在。登場させないはずがない。
そう思うかもしれないが、あながちこの説は間違っていないかもしれないのだ。というのも、作者である諫山自身がとある発言をしているから。