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リア充映画『テラスハウス』を実家暮らしの30代キモヲタに無理矢理観させてみた

 佑依子の貴重なスッピンも映し出され、ほどよく幻滅したところで続々とメンバーがテラスハウスに入居してくる。先の2人に追加して、子どもたちにバスケットボールのコーチをする傍らプロ選手を目指す吉野圭佑、デザイナーを志望し専門学校に通う和泉真弥、『Quick Japan』編集者の小田部仁、そしてテラスハウス出戻り組の島袋聖南の6人。揃いも揃って「私リア充ですが、なにか?」というような奴らである。オシャレな食器で自炊した料理を盛りつけキャッキャウフフと食卓を囲む彼らを見ていると、Lサイズのポップコーンをつまみつつコーラを飲んで観賞している自分がなんだか、途方もない罪を背負い、ゆるやかな精神破壊という刑を執行されているのでは? という気分になってくる。

 しかし、そんななか、唯一と言っていいほど、筆者と同じように前世でなんらかのカルマを背負ったとしか言いようがない人物が存在する。それが小田部仁、通称“オタベ”である。彼のフェイスはいわゆるブサメンに分類され、初対面である真弥に画面越しでも伝わるほどあからさまにガッカリされる始末。非リア充の共感を得るような人物を抜擢するとは「やるなスタッフ」と唸らざるを得ない。しかも彼は、佑依子に対してほのかな恋心を抱いてしまうのだ。「やめてくれ! トラウマをひきずり出さないでくれ!」とフラッシュバックに頭を抱える筆者を尻目に物語は進行する。自分に自信がもてないオタベは、佑依子と釣り合わない自分が恋心のようなものを抱くのは失礼ではないか、というような考えを抱いてしまう。わかる、わかるよその気持ち!

 もういいんだ、お前はがんばった! もうここで止めても、誰もお前を責めないよ! という筆者の応援に反する形で、その考えを察した真弥から悪口なのか激励なのかよくわからない言葉を受ける。「てめえ、そんなことで悩むのは違うだろう、がんばれよオタベ!」的なセリフを、20の女の子に言われるオタベに涙をおさえることができずに、目頭を熱くしていると、信じられない展開が目の前に広がった。

 なんとオタベは、佑依子に対して果敢なアタックをしかけるのだ。そう、じつはこの男、鋼、いや超合金とも呼ぶべきハートをもっていたのである。それは女子部屋に1人で突入し、佑依子をデートに誘うといった行動を起こしたことからも分かるだろう。しかも、佑依子には一度断られたにも関わらず、果敢に再突入するというオマケ付きである。そのうえ、デートの約束をとりつけキャッキャウフフと満喫するのだ。なんだろう、この親しいオタク仲間がじつはオフ会とかも主宰している超絶リア充だったことを知ったときのような気持ちは……。失望感や裏切られたという感覚、嫉妬と羨望がない交ぜになり、複雑極まる感情が広がっていく。祝うべきか呪うべきか、中盤以降はそればかり考えていた。しかしまあ、当然な話ではある。なんせオタベは、かのサブカル人間御用達雑誌『Quick Japan』の編集者なのだから。高いコミュ力に、超合金のハートをもっていたとしてもおかしくはないだろう。「なんで俺、金払って裏切られてるんだろう……」と、佑依子とのデートのために美容院でセットした髪で登場したオタベを眺めつつ、1800円かかったチケットの半券を握りしめる自分がそこにいた。

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