『「AV男優」という職業 セックス・サイボーグたちの真実』(角川文庫)
AV女優のアイドル化が定着した昨今、業界関係者によると、年々AV女優志望者が急増し、「昔はこちらからスカウトするほうが多かったけど、最近は面接に来る女の子が多く、レベルが高くなってきたので受かるのは3割程度」(プロダクション関係者)だという。
蒼井そらに見る世界規模の人気や、紗倉まなが“世界のTOYOTA”のサイトでコラムの連載を開始したりと、羽振りがいい話題ばかりが聞こえてくる。
一方の男優界はどうか。2013年にレジェンド・加藤鷹の引退がニュースになったくらいで、特筆すべき話題はない。というか、そもそも情報がないのである。
そんなベールに包まれたAV男優の生態を、徹底したインタビューで掘り下げた『「AV男優」という職業 セックス・サイボーグたちの真実』(水野スミレ/角川文庫)には、冒頭から驚きの事実が。
「女優一万人に対し、男優70人である。月産四千五百本に対して、70人である」
なんと、これだけ多くのAVがあふれている日本において、男優はたったの70人しかいないというのだ。だから「売れている男優ほど、ものすごいペースでセックスし続ける」ことになり、「最高で1ヶ月に72現場」(阿川陽志)という驚異的な数をこなす男優もいる。
筆者もかつて、男優数人に取材を申し込んだところ、そのほとんどが「今日は2現場あるので、移動時間に電話取材でいいですか?」と言われたことがあるのだが、そういうことだったのかと納得。
そこで気になるのはギャランティだ。それほどの仕事量でどれだけ稼げるのかといえば、「1本につき2万円から6万円」で、「プロ男優たちは、キャリア、人気度によって前後するが、一現場5万円が標準的な相場」だ。なお、カラミのない汁男優は、「1回の射精で千円から1万円。不発の場合はギャラなし」というから、プロと汁の差は歴然だ。
ちなみに加藤鷹は「今も昔も5万円」と言うが、最盛期に1千万円だった制作費が現在で100万前後まで下がり、比例して女優費もスタッフの人件費も激減しているなか、「男優のギャラだけは30年間キープされている」ことの象徴だ。