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「友達作りに必要なもの——それは演技力だ」ライトノベルの心震える名言集

 どうだろう。実は、この本に載っているのは、こうしたアツ(苦し)い言葉のオンパレードなのだ。意外かもしれないが、「オタク」界隈の人々に親しまれているラノベだからこそ、直接的な言い回しや普通に聞いたらちょっとクサく感じるような「格好いい」台詞を、自然と忍ばせることができるのかもしれない。そういう意味では、困難に直面した時に自分を勇気づけたり、勉強や仕事でやる気を出すために使える言葉は、ラノベのなかに結構あるといっていいだろう。

 しかし! これらは残念ながらラノベのほんとうの素晴らしさを伝えているとはいいがたい。同書の名言のセレクトは「仕事に役立つ」という視点に立っているからか、どうも経営者や偉人の名言と大差ない気がするのだ。2014年現在、出版されているライトノベルは10,000作品以上ともいわれている。もっとこう、ラノベならではな、ダイレクトに心に響く金言があるのではないか。

 そこで、この名言集には掲載されていない知る人ぞ知る作品のなかから、これぞラノベの名言と言うべき筆者選りすぐりのものを紹介しよう。これこそが、ほんとうの意味で“知恵と勇気と力をくれる”ラノベの名言だ!


●「失礼な! 365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」

 テストの点数に準じた強さをもつ「召喚獣」を使って戦い、勝てば上位クラスの質がいい設備を手に入れられるというルールが取り入れられた学園で、最下位クラスの主人公が仲間たちと下克上を果たすコメディ作品『バカとテストと召喚獣』(井上堅二/ファミ通文庫)。そこで学年最下位の「バカ」である主人公が口にした台詞。ご存知のとおり、角度は最大で360度。作中でも同じツッコミが入るが、実質美少年に見えるのは特定の5度から見た場合だけということに……。しかし人によっては特定の角度から撮ることによって写真うつりがよくなるとも言うし、あながち間違いとも言い切れないのがこの台詞のすごいところといえる。


●「お金持ちはプライベートジェットやプライベートビーチなどを持ちたがる。常にプライベートタイムであるぼっちは人生の勝者、つまりぼっちはステイタスというべきだ』

 これはひねくれものの主人公と学園一の秀才であるヒロインが、「奉仕部」として生徒たちの悩みを解決する学園ラブコメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(渡航/ガガガ文庫)に登場する一言。確かにセレブな人々はやたらと「プライベート」と名のつくものを持っている。ならばプライベートタイム……一人の時間が多い“ぼっち”な人間もまたセレブとは言えるのでは? 友達がいない人間の僻みに見えなくもないが、結婚して家庭を持ったり、友人たちと頻繁に宴会を開いたりといった人々と比べて、金銭的にセレブなのは……ひとまず間違いないだろう。


●「まったく、小学生は最高だぜ!!」

 子どもは大人と比べて、学習能力や適応能力が高いのはご存知だろう。この台詞は高校に入学しバスケ部に入った途端に、部長のロリコン疑惑で部の活動が出来なくなった主人公が、何の因果か女子小学生のバスケコーチとなる『ロウきゅーぶ!』(蒼山サグ/電撃文庫)の作中で、前述の意味で口にしたものだ。しかし、前後の文章を削ってこのフレーズだけをピックアップすれば、まるでロリコン宣言のようである。実生活でも、他人の言葉の1フレーズだけを憶えていたがために、意味を取り違えてしまうこともままあるだろう。そんなときはこの名言を思い出して、自分の理解が本当に正しいのかを見つめなおしてみては?

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