“奈良のシカ”について日テレのインテビューを受けた人物がネットで攻撃を受けるも、高市は放置
しかも、9月29日放送の『news every.』(日本テレビ)の取材では、「外国人がシカに暴力?」という質問に対して、高市氏は「これは目撃されている方も多い。私自身も何年か前ですが英語圏の方でしたが……」と言うと、こうつづけたのだ。
「シカせんべいを持ってじらすと、寄ってきて足を踏まれるんです。私もやられました(笑)。最初から素直にシカに食べさせてあげたらいいけど、そういうことをして足を踏まれて、怒ってシカを蹴っている英語圏の国の方がいらっしゃったので、エサをどうやって食べさせたらいいかということから始まって、奈良のシカに関しては、足で蹴るということをしたらいけないんだと私自身が説明したことがございます」
「外国人がシカを殴ったり蹴ったりしている」という話だったのに、高市氏が自身で確認したのは「せんべいに釣られて寄ってきたシカに足を踏まれ、蹴り返した外国人」でしかなかったのだ。
明確な根拠も示すことなく元迷惑系YouTuberの言説にまる乗りし、外国人嫌悪を支持拡大の材料にする。そのこと自体が総裁の資質が問われるべき問題だが、さらに最悪なことが発生。それは、高市氏の発言をきっかけに一般人が騒動に巻き込まれ、ネット上で標的にされる事態に発展してしまっていることだ。
前出の9月29日放送『news every.』では、高市氏の発言を検証するために奈良公園を取材し、奈良公園で10年以上ガイドをしているという女性や飲食店を営んでいるという男性が「攻撃的な観光客はあまり見かけない」「(外国人観光客は)フレンドリーにシカと触れ合っている気がします」などとコメント。だが、このコメントが高市支持者らにとって都合が悪かったためか、SNS上では「インタビューに答えていた人物は実在しない」「テレビ局による仕込みだ」という情報が拡散。ついにはコメントした人物を特定しようとしたり、飲食店のレビュー評価を下げてしまうという動きまで起こってしまい、日本テレビも2日になって〈取材にお答えいただいた方や無関係の方に対し、誹謗中傷や迷惑行為等を行うことは、厳に慎んでいただきたくお願い申し上げます〉とするコメントをHP上で発表するにいたったのだ。
だが、高市氏は、自身の根拠なき発言をきっかけにして奈良の一般人を危険に晒すような事態に陥っているにもかかわらず、この騒動をスルー。本来ならば支持者らに向けて日テレのように誹謗中傷や迷惑行為をやめさせるコメントを公表すべきだが、現時点では何のアクションも起こしていない。
しかも、高市氏は同じ22日の所見発表演説会で、さらに根拠不明のデマを垂れ流している。
「(外国人を)警察で逮捕しても通訳の手配が間に合わず、勾留期限が来て不起訴にせざるを得ないと聞く。これはおかしい」
この発言も、「奈良のシカ」発言と同様に疑問視する声が殺到。というのも、逮捕から起訴されるまでには最長23日間の勾留期間があり、「通訳の手配が間に合わない」などということが起こるとは考えにくいからだ。そもそも、そんな事態が頻発していたら、とっくの昔に問題となっているだろう。
実際、警察や検察からも、高市発言を否定する声があがっている。
〈各地の捜査事情を知る警察幹部は「通訳は潤沢ではないが、取り調べができる期間中に通訳が接触できないという状況ではない」といい、通訳不足で不起訴になった事例は「聞いたことがない」と言う。
起訴するかしないかを決める権限を持つ検察内部でも同様の意見が聞かれた。地方の検事正経験がある幹部は「地方では希少言語の通訳確保に苦労することはある」としつつ、テレビ会議システムを使ったリモート通訳を活用するなどしており、通訳を確保できないという理由で「起訴すべき事案を不起訴にした事例は聞いたことがない」と言う。別の幹部も高市氏の発言は「あまりに根拠不明だ」と首をかしげた。〉(朝日新聞10月3日付)
その上、発言の根拠を問われた高市氏の事務所も、「実際に不起訴になる事例が頻発しており問題だということを言いたかったのではなく、そういう話が『人口に膾炙する』(人々の間で盛んに話題になる、という意味)くらい、国民の間に不安が広がっている、ということを言いたかったもの」と回答(前出・朝日新聞)。これまた根拠を示すことなく、姑息に話題をすり替えたのだ。