大阪港湾局は営利企業への便宜供与が違法となる可能性を事前に認識
しかも、問題なのはこれが特定企業への便宜供与に当たる可能性が高いことだ。本来ならカジノ事業者が負担するはずの残土処分費は、この掘削によって少なくとも15.8億円も減ったことになる。処分先への運搬なども含めると、この肩代わりによってカジノ業者が得る利益は20億円超となるという。
実際、工事を担当した大阪港湾局は、これがカジノ事業者への便宜供与で違法行為となる可能性を認識していた。前述した2020年9月2日の副市長・副知事への説明資料では、「IR区域掘削土の万博区域掘削土への活用が、IR事業者への便宜供与とみなされる訴訟リスク」があると指摘。大阪港湾局が相談した法律事務所の返答として「IR事業者が利益を得ることになるのであれば、住民訴訟のリスクは高い。(合理的な説明ができなければ敗訴する可能性がある)」「本来、IR事業者が負担すべきものについては、負担を求めることが望ましい」と記述していたのだ。
だが、こうした大阪港湾局の懸念や法律家の警告を黙殺し、大阪府と市はカジノ用地の掘削を「最も安価な方法」だとして正当化。あれだけ経費削減が求められていた万博の予算に付け替えたというのだから、いかにカジノ優先であるかがわかるというものだ。
しかも、だ。府・市が「最も安価な方法」だとするカジノ用地の掘削について、赤旗が検証した結果、〈カジノ用地掘削でむしろ万博経費が増加〉したことが判明したというのだ。
大阪府・市がまとめた事業費比較では、カジノ用地の掘削土を使った万博用地盛り土の事業費は7億円で、当初予定していた関東地方の残土を使った場合の10億円を下回るとしている。だが、実際の工事費の内訳書によると、カジノ用地の掘削土を使った万博用地の盛り土は7億円ではなく約10.6億円、掘削中の鳥類保全対策など本来は不要だった追加費用を含めると約12億円だったという。つまり、カジノ用地の掘削は「最も安価な方法」ではなかったのだ。
この問題を会見で追及された横山英幸・大阪市長は、「費用や土の性質、工事全体の調整、さまざまな課題を検討した結果、もっとも経済合理性、そして夢洲の工事全体の調整から最適な選択肢を選んだ」と述べたが、カジノ事業者への優遇をもとにした「経済合理性」だったことは明らか。実際、赤旗の取材に対して大阪港湾局は「事業費比較のあとで関東残土を選択肢から外したので、どちらが本当に安いか最終的な比較はしていない」「(関東残土を確認した際の記録は)何も残していない」と返答しているからだ。