吉村知事の言論弾圧発言「玉川徹は万博出禁」を『モーニングショー』は沈黙スルー
だが、この万博礼賛報道は、大越キャスターだけの問題ではないだろう。というのも、今回の『報ステ』の万博特集自体、「テレ朝の局としての意向ではないのか」という見方があるからだ。
実際、テレ朝と万博をめぐっては、玉川徹氏が『羽鳥慎一モーニングショー』で大阪万博の問題点を指摘してきたことを受けて、吉村知事が「玉川徹は万博出禁」と発言。その後、吉村知事は出禁発言を謝罪したが、問題は『モーニングショー』の対応だ。
批判的な報道に対して為政者が名指しで「出禁」などと取材拒否を口にすることは、権力の濫用、言論弾圧にほかならず、当然、刃を向けられた『モーニングショー』と玉川氏は、放送を通じて反論をおこなうのだろうと思われた。ところが、スポーツ紙やネットメディアのみならず大手紙や他局のニュース番組でもこの吉村発言が伝えられるなかでも、なぜか『モーニングショー』は沈黙。さらに、吉村知事が「言い過ぎた」と謝罪をおこなったあとも、番組ではスルー。それどころか、万博の話題そのものを番組で掘り下げて取り上げなくなってしまった。こうした不自然な流れのなかでおこなわれたのが、今回『報ステ』の万博礼賛報道と吉村知事の単独インタビューだったのだ。
しかも、『報ステ』の単独インタビューでは、当然触れるべき出禁発言に言及することもなかったばかりか、吉村知事が出禁発言をめぐって主張していた“万博のプラスのことも報じてほしい”という要望に応えるかのように、パビリオンのブースに参加するという大阪の中小企業を取材した模様まで放送。また、先述したように『報ステ』内で大越キャスターは過剰なまでに大屋根リングを褒めちぎっていたが、吉村知事が玉川氏の発言でとくに問題視していたのが大屋根リング批判だったことを考えると、まるで玉川氏の批判を大越キャスターが穴埋めしたかのようだった。
こうしたことから、「裏でテレ朝側と吉村知事側が手打ちをしたのでは」「テレ朝の上層部が『報ステ』での特集と引き換えに吉村知事側と取引したのだろう」という見方が広がっているのだ。
そもそも、報道内容に対して言論弾圧をちらつかせる権力者に対して、報道機関は言論で徹底抗戦すべきだ。しかし、沈黙を貫いた挙げ句、局の看板報道番組で礼賛報道をおこなうとは、テレ朝は報道機関として終わっているとしか言いようがない。