ジャニー喜多川の性加害を報じなかった経緯と構造をテレビ局は具体的に検証せよ
NHKも同様だ。NHKは2013年にジャニー氏の独占インタビューを交えたジャニー氏を称賛する番組を「NHKワールドTV」で放送したほか、2018年にも『ニュースウオッチ9』の特集にジャニー氏が登場。また、2019年にジャニーズ事務所が建てた商業ビルには、NHKの「ポストプロダクションセンター」が入居しているほか、2022年にはNHKでドラマ制作に携わりNHK理事を務めた若泉久朗氏がジャニーズ事務所の顧問に就任している。一方、ジャニー氏の性加害問題に対しては、NHKは5月に『クローズアップ現代』で性加害の実態について独自取材に基づいて報じたが、大きな特集を組んだのはそれだけ。7月には『ザ少年倶楽部』を12月以降も継続することを明らかにしている。
ジャニー氏による性加害問題において直接的な“共犯関係”であった可能性が指摘されているにもかかわらず、レッスン場提供の有無をはじめとする検証を実施することもなく、アリバイづくりの大甘な報道でお茶を濁そうとするNHKとテレ朝──。その責任の重さを受け止めようともしないこの2局に、報道機関としての資格があるといえるだろうか。
無論、責任の重さを自覚し、自局の独自検証が必要なのは、NHKとテレ朝にかぎったものではない。各局とも、ジャニー氏の性加害を真実と認定した「週刊文春」裁判の最高裁決定を報じなかったことなどを持ち出して「報道してこなかったことの責任と反省」をキャスターらが口にしているが、問題の本質は、ジャニーズ事務所との利害関係をはじめとして、具体的にどういう経緯で、どういった構造のなかでテレビが沈黙を貫いてきたのかにある。だが、その検証を実施した局はいまだに一社たりともない。
だいたい、テレビが報じてこなかったのはジャニー氏の性加害の問題だけではない。ジャニーズタレントの不祥事やスキャンダルも、テレビはまともに報じてこなかったではないか。