“子どもの在留資格”を人質に法案賛成を迫る自民党の卑劣っぷり
政府・自民党の非人道性の最たるものが、子どもの保護をめぐる対応だ。
今回の入管法改正案では、前述したように3回目以降の申請者が送還可能になってしまうため、日本でしか暮らしたことがない子どもも送還されてしまう危険が高く、立憲民主党は在留特別許可を柔軟に与えるよう要求。それを受けて与野党の修正協議では、立憲の主張を踏まえ、与党は在留特別許可を出すかどうかを判断する際に「児童の利益」を考慮するよう条文に明記する修正案を示していた。
ところが、4月26日付の朝日新聞デジタルの報道によると、立憲が反対に回った場合には「この修正は削除される」というのである。
言っておくが、日本も批准する国連の「子どもの権利条約」において「子どもの最善の利益を考慮する」(第3条)と明記されているように、これは子どもの当然の権利だ。また、同条約では「子どもがその父母の意思に反して父母から分離されないことを確保する」(第9条)とも規定されているが、この国の入管行政はそれを平気で踏みにじり、子を親から引き離すといった条約違反の行為を繰り返してきた。つまり、本来ならば「児童の利益」を条文に書き足す程度では足りず、条項として新たに盛り込むことが必要なものなのだ。しかし与党は、この必要最低限の修正案ですら「立憲が反対するなら削る」などというのである。
いや、それだけではない。4月25日には「政府・与党が、今回の改正案が成立すれば、在留資格のない201人の子どもたちについても在留特別許可を与える方向で検討を始めた」などと報道されたが、これは子どもの保護に見せかけた詭弁以外のなにものでもない。
まず大前提として、子どもが持つ正当な権利を駆け引きの材料に使うこと自体、下劣としか言いようがないが、子どもだけに在留特別許可を出しても、親が送還されれば子どもだけでは生活はできず、親子ともに許可すべき問題だ。また、そもそも在留特別許可を出すことは、たんに法務省が定める在留特別許可のガイドラインの運用を見直せば可能なもの。それを改正案成立の交換条件のように持ち出すとは、あまりに卑劣すぎて絶句するほかない。