吉村知事と松井市長が大失敗「大阪産ワクチン」に肩入れした理由 以前から両者はべったりの関係が
だが、こうした疑惑に対して責任を負うのは、言うまでもなく、森下氏を総合プロデューサーに引き立てた吉村知事と松井市長だ。
そもそも、吉村・松井氏は、アンジェスが開発を進めてきたワクチンを「大阪産ワクチン」と喧伝していた際から、その関係を訝しむ声があがってきた。
というのも、2020年4月に吉村知事はアンジェスのワクチンを「7月頃には初の治験ができる。9月頃には実用化し、年内には10万、20万人に接種する。これは絵空事ではない」と豪語し、同年5月にはパナソニックから大阪府にワクチン開発費として寄付された2億円のうち1億5000万円を森下氏が所属する大阪大学に割り当てたことを公表。さらに同年6月には「ぜひ大阪で実現させたい。オール大阪で取り組んでいく」などと発言した。
このように、実績のある世界的な巨大製薬会社ならともかく、開発実績が乏しいと指摘される製薬ベンチャーにこれほどまでも肩入れして大言壮語を繰り返した吉村知事。つまり、アンジェスのワクチン開発を「やってる感」の演出に利用していたわけだが、問題は、吉村知事の発言がアンジェスの株価を急騰させたことだ。
実際、吉村氏の6月の発言を受けてアンジェスの株価は、2月28日には375円だったのが6月26日には2492円にまで爆上がり。こうしたことから、ネット上では「アンジェスの株価つり上げの仕掛けではないか」などとも言われたのだ。
しかも、この「大阪産ワクチン」問題は、吉村知事と松井市長がたまたま大阪で開発中のワクチンがあることを知り実用化できると勘違いしたというような素朴な話ではなく、最初から政治的に仕掛けられたにおいが漂っていた。
前述したように、森下氏は安倍元首相のゴルフ友達であり、第二次安倍政権時には「内閣府規制改革会議」委員に選ばれたほか、安倍首相が本部長を務める「内閣官房健康・医療戦略本部」でも戦略参与に。また、森下氏は医療研究者でありながら、安倍元首相の憲法改正の動きを後押しする“改憲映画”まで製作していた。
2020年に公開された浅野忠信と宮沢りえ主演の映画『日本独立』を、「森千里」名義で製作総指揮にあたったと「週刊文春」(文藝春秋)が報道したのだが、その記事では関係者が「映画の企画がスタートしたのは、安倍政権が憲法改正を目指していた頃で、森下氏は出資者を募っていました。日本国憲法はGHQによる押し付け憲法だという内容で、憲法改正を後押しする“改憲映画”。世論を喚起して憲法改正の機運を醸成しようと森下氏は考えたのでしょう」と証言していた(ちなみに、この映画には件のサイエンス社が特別協賛している)。
そして、当然ながら森下氏は、維新とも近い関係にあった。2013年に森下氏は「大阪府・市統合本部医療戦略会議」特別参与となり、2016年には「日本万博基本構想」委員に就任。つまり、この時点ですでに吉村知事や松井市長と森下氏にはパイプがあったのだ。
アンジェスワクチンの効果や実現性の難しさは当初から指摘していたにも関わらず、吉村知事・松井市長が大々的に入れ込み、大阪府が巨額の税金をつぎ込んだ背景には、こうした関係。お友達優遇があったのではないか、という疑念は今も消えていない。