首相官邸HPより
選挙が終わった途端、自民党政権がいつもの棄民姿勢をあらわにしている。その最たる例が、非難の嵐となっている「18歳以下の子どもに5万円+クーポン券5万円を給付」という政策だ。
大元は公明党が「18歳以下に現金10万円を一律給付する」と選挙公約に掲げていたもので、自民党はこれに「年収960万円以下」という所得制限と、5万円をクーポン券の配布にするという条件をつけることで合意した。だが、岸田首相が「年収960万円以下」という所得制限は「世帯主単位」だとしたことで、「共働きだと有利」「不公平だ」と不満が噴出。昨日12日には高市早苗政調会長が「非常に不公平」「財務省がまとめているペーパーにも世帯という書き方をしている。共働きのご家庭が多い現状だ」と批判し、今後、自民党内の議論で変更になる可能性を示唆した。
だが、問題は、基準を世帯全体の年収にするか、世帯主個人の年収にするかということではない。
言うまでもなく、岸田政権がすぐに実行すべきはコロナ禍で生活に困窮する幅広い人たちへの手厚い現金給付だ。「子どもの貧困」は重要な問題だが、子どもの貧困は親・保護者の貧困が大きな要因となっていることを考えれば、子どもへの支援は別途オプションでつければいい。ところが、自民は政権維持のために公明の主張を無視できないために「未来応援給付」などというコロナ対策なのか子育て支援なのかはっきりしない政策を推進しようというのだ。自民・公明は野党共闘に対し「烏合の衆」などと攻撃してきたが、自民・公明こそがそうであることの証明ではないか。
挙げ句、自民が条件にしたのは「クーポン券の配布」……。これは「是が非でも国民には貯金をさせずに経済を回させる」という麻生太郎的発想からきているだけでなく、またしてもお友だち企業に中抜きによって甘い汁を吸わせようという愚策中の愚策だ。
しかも、「年収要件は世帯主単位」とした岸田首相に「非常に不公平」と言い出した高市政調会長は、所得制限のない公明案に対して難色を示した際、「私たちはお困りの方に経済的支援をするという書きぶりで政権公約をつくった」などと主張していたが、その肝心の困窮する人たちへの支援策というのが、さらにひどい。
自民・公明は「18歳以下への給付」のほか、住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり現金10万円を支給することで合意したが、10万円という金額では焼け石に水であるだけでなく、住民税非課税世帯を対象にすると、東京23区の場合、単身者だと年収100万円程度以下が対象となり、年収200〜300万円では対象にならない(東京新聞11日付)。