医薬品の審査手続きを無視してまで、大阪ワクチンを政治利用してきた吉村知事
吉村・松井が喧伝してきたこの「大阪産ワクチン」は、「やるやる詐欺」「アンジェスの株価つり上げの仕掛けではないか」とからかわれていたが、まさかの「効果が低くて治験断念」とは……。
開発会社のアンジェスは一応、今年8月から進めている改良ワクチンの治験に注力し、2022年に最終段階の治験実施、2023年以降の実用化を目指すとしているが、この間の経緯を見れば信じ難いし、仮にそんな時期に実用化されたとしても、完全に手遅れ。「大阪産ワクチン」は事実上、頓挫したと見るべきだろう。
ところが、吉村知事も松井市長も、この「治験断念」について完全に知らんぷり。いまだまともな説明をしていない。
もちろん、ワクチンの開発・実用化が容易なものではないのはたしかだ。しかし、吉村知事と松井市長はこの「大阪産ワクチン」を自ら発表し、以降も徹底して自己宣伝に利用してきた。
しかも、前述したように、「2020年秋に実用化」「2021年春から秋に実用化」などという予断を堂々と語り、「大阪産ワクチン」のために行政を捻じ曲げるような行為までやってきた。
たとえば、前述したように昨年6月、吉村知事が「30日から治験開始」を発表したが、これは大阪市立大学が治験計画を承認するかどうかを審査するよりも1週間も早い発表で、厳正であるべき医薬品審査の手続きを完全に無視する非常に危険な暴挙だった。吉村知事はあとになって「方向性・目標を発表しただけ。目標を示すのは知事として必要な役割」などとごまかしたが、危険かつ強引な政治主導であることは明白だった。
これ以外にも、「大阪産ワクチン」の開発をめぐっては、吉村知事と松井市長がバックについたことで検証プロセスが非常に拙速になっているのではないかという指摘も挙がっていた。たとえば、大阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授は、時事通信の取材に対し、欧米や中国では、人への治験開始前に動物実験の詳細なデータが公開されているのに、「アンジェスは開示していない」と指摘。「承認後に死者が出たケースも過去にはある。スケジュールありきで進んではならない」と警告を鳴らしていた(時事ドットコム2020年6月30日付)。