ラムダ株はいまも「公表しないくていい」状態 パラ期間中に確認されても隠蔽するつもりか
だが、恐ろしいのは、こうして国民に伝えるべき情報を、東京五輪開催を優先させるために隠蔽したことだけではない。問題は、24日からはじまるパラリンピックでも同じように情報隠しがおこなわれている、ということだ。
というのも、前述の記者会見で加藤官房長官は、変異株にかんする公表方法について、こう述べたからだ。
「新型コロナについては国民のみなさま、さまざまな関心や不安を持っている。そういった意味において、変異株にかかる情報のあり方がそれに沿ったものなのかどうかという観点で、いま厚労省で検討がなされている」
つまり、「どう公表するかは検討中」だということは、いま入国がおこなわれているパラリンピック関係者からラムダ株をはじめとする国立感染研が「懸念される変異株」に位置づけていない変異株が確認されても、現時点では「公表しなくてもいい」扱いになっている、ということなのだ。
19日時点でパラ関係者の感染者数は74人にのぼり、選手村滞在者からも感染が確認されているが、もしかすると、すでにラムダ株などの変異株が確認されながらも公表されず、またも閉会後まで隠蔽されるかもしれないのである。
そもそも、政府は五輪をめぐっても、感染者の情報公開を求められると「組織委では陽性者となった大会関係者の個人にかんする情報は公表しない取り扱いになっている」などと逃げてきた。ラムダ株の国内初確認事例の情報隠蔽でさらに不信感が高まっているにもかかわらず、この期に及んでも「検討中」などと言っていることからも、パラリンピック閉会まで再び“不都合な事実”が隠されてしまう可能性は十分考えられるだろう。
それでなくても、ラムダ株が確認された大会関係者と濃厚接触した可能性のある人のリストを厚労省が関係自治体や組織委と共有しなかったことを厚労省は18日になって発表。「ベータ株」の感染者でも同様の問題が起こっていたといい、厚労省のザルぶりが明らかになっている。しかも、ラムダ株はスクリーニング検査がおこなわれておらず、市中感染がすでに起こっていてもおかしくない状況にある。
医療崩壊のみならず、検疫・変異株スクリーニングの不徹底、さらには情報隠蔽──。こんな国で、これから子どもまで観客として動員しパラリンピックを開催しようとしているのである。正気の沙汰ではないとしか言いようがないだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2021.08.20 12:11