バッハ来日の7月15日時点で自宅療養者支援がパンク、27日以降、東京都は支援を30歳未満に絞った
にもかかわらず、そうやって患者を自宅に放置して最悪の事態を招いたというのに、自身の責任やお悔やみの言葉もないまま飛び出した言葉が、「基本的なところをお守りいただきたい」……。和歌山県など「陽性者は全員入院」の方針をつづけている自治体もあるなか、感染拡大を抑えきれず医療崩壊を起こしたツケを都民に回し、「若くて基礎疾患もないから」とひとり暮らしの都民を自宅に放置してもいいと判断したのは小池都知事だというのに、このような暴言を吐くとは、あまりにも冷酷で無責任すぎるだろう。
そもそも、姑息なことになるべく陰に隠れようと鳴りを潜めているせいか、小池都知事に対する批判の声は菅首相などにくらべて大きくないが、東京五輪の開催強行のために市民の命を危険に晒したという意味で小池都知事の責任は極めて重い。しかも、小池都知事はこの間、五輪にかまけて都民を守るためのコロナ対策をほとんど打ち出さなかった。いや、東京五輪を最優先させ、感染拡大を止めようともせず危険信号をも無視してきたのだ。
その例のひとつが、「自宅療養者フォローアップセンター」(FUC)の体制だ。FUCでは軽症・無症状の自宅療養者のための医療相談、食料配送やパルスオキシメーターなどの配布などの業務を担うために都が昨年11月に設置したものが、今回の感染拡大で対応が追いつかなくなり、7月28日からは当面の措置としてフォローする対象を30歳未満に引き下げ、30歳以上は保健所が対応することになった。
だが、実態はこの7月28日以前から対応が追いつかなくなっていた。ノンフィクション作家・山岡淳一郎氏のレポート(12日付「現代ビジネス」記事)では、都の保健所の職員がこう証言している。
「FUCは対象の自宅療養者が2000人を超えて、ほぼパンクしました。連絡がとれない、パルスオキシメーターも食べ物もこない。それでとうとう7月27日以降、都は支援する自宅療養者を30歳未満に絞っちゃった。30代~50代の面倒はみません。年齢が上がるほど重症化のリスクが高くなるからでしょう。同居者がいる人も対象外。それが実態ですよ」
東京都で自宅療養者が2000人を超えたのは、7月15日。小池都知事が来日したIOCのトーマス・バッハ会長と会談したのと同じ日だ。同日、小池都知事はバッハ会長から誕生日のプレゼントに花束を手渡されて上機嫌な様子だったが、その裏ではすでに東京は自宅療養者のフォローアップが追いつかず、パンクしていたのである。