厚労省HPより
一昨日8月6日、厚生労働省が、国内ではじめて、新型コロナの変異ウイルス「ラムダ株」が見つかったことを明らかにした。羽田空港の検疫所で新型コロナウイルスへの感染が確認された女性から検出されたという。
周知のように、ラムダ株は、ペルーで最初に報告されて以降、南米を中心に感染拡大している変異株で、現在、日本を席巻しているインド由来のデルタ株よりもさらに感染力が強く、ワクチンが効きづらい可能性も指摘されている。
感染がさらに深刻化することが心配されるが、もうひとつ問題なのは、政府がこのラムダ株検出という事実を隠蔽していたことだ。
実は、羽田空港の検疫所でラムダ株が検出されたのは7月20日。日本の国立感染研究所も同日、この事実を確認し、感染症の国際データベースであるGISAIDに感染性の高いラムダ変異体が国内で発見されたことを報告していた。ところが、日本国内では、厚生労働省も内閣官房も感染研も一切、その情報を公開しなかった。
しかし、ジャーナリストのJake AdelsteinとChihiro Kaiが、GISAIDに出された報告を発見。感染研や厚生労働省に取材した上、6日朝、日本ウォッチを続けているwebサイト「Japan Subculture Research Center」とアメリカのリベラル系ニュースサイト「DAILY BEAST」などで報道した。
そのため、6日夕方になって、慌てて、厚生労働省が事実を認め、国内のマスコミ向けに公表したということらしい。
ラムダ株検出の事実はもちろん、7月20日の時点で厚労省にも情報が上がっている。つまり、厚労省は2週間以上もこの事実を隠し続けていたということだ。
この隠蔽の背景にあるのは、おそらく東京五輪への配慮だろう。ラムダ株が発見されたのが、東京五輪開幕3日前だった7月20日だったため、東京五輪への反対論に火がつくのを恐れたため、隠したのだろう。
実際、Jake AdelsteinとChihiro Kaiによる「DAILY BEAST」の記事では、国立感染研の職員が匿名でこう証言している。
「通常、新しい変異株が見つかると、情報はすぐに公表されるが、今回は公表されない」 「この情報はオリンピックが終わった後に報告するのが最善であるというコンセンサスが厚生労働省にあった」
そう、厚生労働省は、東京五輪が終わるまで、この国内初のラムダ株検出というニュースを隠し通すつもりだったのである。
周知のように、五輪をめぐってはこの間、政府・組織委・東京都が都合の悪い情報をとにかくひた隠しにするということが行われてきた。海外の選手やスタッフのコロナ感染、バブルの破綻、濃厚接触者をめぐるなし崩しのルール変更、都民向け療養施設の五輪転用なども、メディアや野党の追及があって始めた明らかになったもので、自ら積極的に情報開示したものはひとつもない。
しかし、まさか感染状況を劇的に悪化させる可能性のあるラムダ株の検出まで、五輪のために隠蔽するとは……。
今回はたまたま、国際的なデータベースに報告があげられ、海外のメディアがそれを追及したから認めたが、この調子では、他にも隠蔽している情報がたくさんあるのではないかと疑わざるをえない。
たとえば、今回、明らかにされたラムダ株は羽田空港の検疫所で見つかったものだが、もしかしたら、都内で検出されたラムダ株を、厚労省が隠蔽している可能性だってゼロではないだろう。
たかだかスポーツのイベントのために、国民の生命を左右するような重大な情報まで隠される。日本はいつのまにこんな恐ろしい情報統制国家になってしまったのか。
(田部祥太)
最終更新:2021.08.08 01:41