政権幹部が「感染者数より重症病床数」と口をそろえ始めたのは、緊急事態宣言発出しないため
緊急事態宣言を解除し重点措置に移行した結果、東京では感染者数があきらかに増加し、きょう6日の新規感染者数も先週火曜日より117人も増えて593人となった。前週の同じ曜日を上回るのは17日連続であり、7日間平均は602.3人。この数字は前週の121.7%となる。このまま増加比率が120%でつづいていくと、五輪の開会式前には4 月 25 日の緊急事態宣言時とほぼ同レベルの新規陽性者数になる。
さらに、前回の宣言発出時とは違い、東京では感染力の高いデルタ株が拡大中だ。実際、きょう東京でデルタ株感染が確認された人数も過去最高となる94人にもおよんでいる。
つまり、どう考えてもいま取られるべきなのは重点措置の延長ではなく、緊急事態宣言の発出だ。にもかかわらず、効果がまるで出ずに感染拡大を招いている重点措置を最大1カ月も延長しようというのだ。
しかも酷いのが、宣言発出をしないために菅政権が持ち出している主張だ。それは「新規感染者数よりも大事なのは重症病床数」というものだ。
たとえば、田村憲久厚労相は本日、「新規感染者数だけを見るとステージ4だが、病床の状況はステージ4にはなっていない。専門家はいちばん重要なのは病床の状況だと言っている」と発言。
さらに、コロナ担当の西村康稔・経済再生担当相も、こんな発言を繰り返してきた。
「大事なことは重症者の数、(入院の)ベッドがどのぐらい使われているか。この医療提供体制を最も重視をして判断をしていきたい」(6月20日/NHK『日曜討論』での発言)
「ワクチン接種が進むと、かなり重症化を抑えられる。感染者が増えても重症者が増えなければ、新型コロナの入院者は減っていく」(6月22日/会見での発言)
そして、この姿勢は菅官邸の方針だ。朝日新聞は6月30日付記事で官邸幹部のこんな言葉を伝えている。
〈官邸幹部は「重症化しなければ、コロナもただの風邪になる」と強調。東京で新規感染者数が増えても、ほかの指標次第では緊急事態宣言を出さずに済むとの見方を示す。〉
「重症化しなければ、コロナもただの風邪」──こんな認識でコロナ対策を指揮していると考えるとゾッとするが、この方針のもとで菅政権は緊急事態宣言の発出をせずに突き進もうとしているのだ。