菅首相のヨイショ報道をするNHK
13日まで英コーンウォールで開かれたG7サミット。菅義偉首相にとっては対面での国際会議デビューとなったが、ネット上ではその存在感のなさが大きな話題となった。G7とゲスト国の首脳との写真撮影後やエリザベス女王との写真撮影後、輪に入れずポツネンとしている菅首相の“ぼっち写真”が拡散されたためだ。「これでは『外交』どころか『社交』にもなっていないのでは」という懸念が広がったのは言うまでもない。
ところが、こうした懸念とは真逆の報道がNHKでおこなわれた。昨日13日放送の『ニュース7』では、G7で「菅首相が議論を主導した」と伝えられたのだ。
NHKが「菅首相が議論を主導した」と伝えたのは、途上国へのワクチン提供について。青井実キャスターが「成果文書のとりまとめに向けて、菅総理大臣はどのような役割を果たそうとしているのでしょうか」と中継を結んでいた現地の長内一郎記者に問うと、長内記者はこう解説をおこなったのだ。
「主要なテーマとなった新型コロナ対策では、セッションの冒頭、菅総理大臣が『ワクチン普及は多国間主義を基本とし、途上国に公平かつ迅速に届ける必要がある』と訴え、議論を主導したかたちとなりました」
さらに、『ニュース7』では画面上でもわざわざテロップで「菅首相 議論を主導」と打ったのだ。
記念写真の撮影後にはあきらかに借りてきた猫のようになっていた菅首相が、議論を主導した……!? 当然、このNHKの報道内容にはネット上でも疑問を呈する声が飛び交ったのだが、そもそも国内の記者会見はおろか国会での答弁すら、手元の原稿を読むことさえおぼつかないあの人が、国際会議で議論を主導するなんてことができるのか。
いや、それ以前に、国内の接種率がG7でぶっちぎりの最低となっている菅首相がワクチン提供の議論を主導するなど、客観的にありえない。
実際、低所得国への10億回分ワクチン提供は、10日の段階ですでに議長国であるイギリスのジョンソン首相がG7で合意する見通しであることを打ち出しており、さらにワクチン外交によって途上国への影響力拡大を図る中国を意識するアメリカのバイデン大統領もG7に先立って5億回分の提供を表明していた。すでに議論はイギリスとアメリカが主導していたのだ。
しかも、「菅首相が議論を主導した」とNHKが伝えた途上国へのワクチン提供について、じつは日本政府は寝耳に水で、当初は「不満」を漏らし、「困惑」さえしていたというのだ。
〈G7サミットで議長国・英国が打ち出した途上国向けの新型コロナウイルスワクチン「10億回分提供」は、日本政府に事前に連絡がなく、外務省幹部は「まったく聞いていない。なんの根拠もない数字だ」と不満を漏らした。日本は2日の「ワクチンサミット」で、途上国へのワクチン普及支援として8億ドル(約880億円)の拠出を表明したばかり。政府内で困惑が広がっている。〉(毎日新聞ウェブ版12日付)