厚労省が「病床使用率」の算出方法を変更! 一般病床への入院者隠し
実際、東京都と同じくインド型変異株のクラスターが発生している神奈川県の黒岩祐治知事は、7日におこなわれた全国知事会と国の意見交換会後の会見で「デルタ株の感染状況を見ていると、濃厚接触者ではない人からも感染者が出ている」と言及、国に対して濃厚接触者の定義見直しを提案したというが、この提案に対する田村憲久厚労相の反応は〈専門家組織に諮る考えを示した〉というものだった(神奈川新聞ウェブ版7日付)。
インド型変異株の感染力の高さはずっと指摘されつづけているというのに、いまだに濃厚接触者の定義を見直そうともしない。まるで感染者が急増するのを見過ごそうとしているようでさえあるが、いま濃厚接触者の定義を変えて検査を増やすと当然ながら感染者数も増える。そうして東京五輪の開催に逆風が吹くことを恐れ、こんな体たらくになっているのではないのか。
だが、東京五輪の開催のために数字をごまかそうとしているのではないかという疑念が持たれているのは、東京都の検査数だけではない。
ここにきて厚労省が、国の指標のひとつである「病床使用率」の算出方法を変更したからだ。
これまで「病床使用率」は、確保病床数を分母にし、確保病床に入院する患者と、確保病床としての調整が終わっていない一般病床に入院する患者、さらに入院先が決まった患者の合計を分子にして割り出していた。だが、今月4日からは、一般病床に入院する患者と入院先が決まった患者を分子から除外し、確保病床数と確保病床に入院する患者だけで割り出すよう変更したのだ。
一見すると、一般病床に入院する患者をカウントしながらその病床数は分母から除外されていたため、その点を是正する変更のようにも思える。だが、「病床使用率」というのは、医療提供体制の逼迫度を見るためのものだ。にもかかわらず、入院先が決まった患者はおろか、一般病床に入院を余儀なくされる患者の数を除外することは、実態の厳しさを見えづらくするものだ。
そもそも、これまでの「病床使用率」の算出方法自体、実態を過小評価しているという批判があった。「病床使用率」を割り出すのに使用されている確保病床数が「患者の受け入れ要請があれば、受け入れをおこなうことについて医療機関と調整済の病床数」であり、すぐに対応できる病床を表す「即応病床数」ではないからだ。だが、そうした分母の甘さを見直そうとせず、むしろ分母はそのままに分子を減らそうとは、あまりにも露骨だ。
しかも、そんなことは起こらないと信じたいが、今回の算出方法の変更は、理屈上では、感染者が急増して確保病床の逼迫が起こっても、患者を一般病床に入院させれば数字上はごまかすことが可能になるのである。