首相官邸HPより
東京五輪の開催まで50日を切ったなか、開催地である東京都で恐れていた事態が進行していることが明らかになった。本日9日、東京都はインドで見つかった変異株「L452R」(デルタ株)の感染が10人から確認されたと公表(8日確認された中学生と合わせて計11人のクラスター)。初の二桁台となり、さらには10歳未満の感染確認も初となった。東京でインド型変異株の市中感染がはじまっていることは間違いない。
そもそも、政府分科会の尾身茂会長も1〜2カ月でイギリス型からインド型変異株に置き換わると見通しを示していたが、問題はその感染力だ。実際、イギリスでは4月末に1回接種を終えた国民の割合が50%を超え、新規感染者数も1月初旬には1日あたり6万人を突破していたのが4月下旬には1000人台まで減少。ところが、最近は再び増加傾向にあり、昨日8日の新規感染者数は6000人を超えた。この感染者増加の背景にあるのがインド型変異株で、イギリスの国家統計局は〈国内で感染が広がっているのはデルタ株だと推定される〉とし(BBC NEWS5日付)、政府の専門家委員会のラヴィ・グプタ教授もデルタ株が「感染を拡大させている」と指摘している。
ワクチン接種によって感染の抑え込みに成功したと見られていたイギリスでさえ、その脅威に警戒を高めているインド型変異株。だが、感染力だけではなく重症化リスクについても不安がつきまとう。インド型変異株の患者を3人診たという松本哲哉・国際医療福祉大教授も「3人のうち2人は若いのに重症化していて、怖い印象を持っている」と指摘している(毎日新聞6月7日付)。
このように、東京で高まりつつあるインド型変異株の感染拡大への懸念。当然、東京都も警戒を強めているはず。……そう思いきや、現実はまったく違った。
というのも、肝心の東京都の検査数は、増えるどころか減少しつづけているのだ。
たとえば、本日9日13時時点の東京都のデータによると、5月18日〜24日の7日間の検査数合計は6万3627件だったが、5月25日〜31日の合計は5万8983件と減少。直近の6月1日〜7日までの合計は5万1129件と、さらに減っているのである。
インド型変異株の感染拡大が指摘されている上、よりにもよって世界中から選手を集め、観客を入れて五輪大会を開催しようとしているというのに、直近7日間の平均でも約7000件程度の検査しかおこなわれていない──。最近は新規感染者数が減少傾向にあることばかりが強調されているが、検査数が少ないために捕捉できていないだけで、こうしているあいだにも変異株感染が広がっているのが実態ではないのだろうか。
いや、というよりもこれは東京五輪開催のために感染者数を少なく見せたいという意向が働き、こんなお粗末な数字になっているのではないのか。