インドを水際対策強化対象国に含めたのは28日、これまではPCR検査でなく抗原検査
求職希望を登録している「潜在看護師」は5万人と言われているが、求人募集によってワクチン接種業務に携わっているのは約300人……。ようするに、ワクチン接種業務のための看護師確保もままならない状況にあることを伝えられていたのに、菅首相は「休んでいる看護師を東京五輪に動員するのは可能」などと宣言したのである。
本サイトでは菅首相について、「楽観的というレベルを超え、自分の信じたいことしか耳に入れず、自分に都合よく解釈してしまう“確証バイアスの化け物”」だと指摘してきたが、今回の発言もそれと同じなのだろう。つまり、ワクチン接種のための看護師確保が進んでいないという現実を突きつけながらもそれは無視し、「潜在看護師は5万人」という数字だけで「休んでいる看護師を東京五輪に動員するのは可能」などと発言した。そういうことではないのか。
事実や客観的データを把握した上での冷静な判断が求められるコロナ対応において、独善的な解釈による「お花畑思考」で物事を進めようとする──。そもそも、仮に約500人の看護師を確保できるとしても、医療崩壊が起こっているこの状況を考えれば医療現場のために確保するべきだというのは論を俟たないが、その当たり前がこの男には通用せず、「東京五輪開催で内閣支持率を上げて解散へ」という私利私欲しか頭にないのだ。
しかも、菅首相が支離滅裂なのは、東京五輪を開催しようというのであれば当然強化すべき国内の感染拡大防止策をおろそかにしていることだ。とくに驚愕するのは、何度も失敗してきた水際対策だ。
たとえば、4月23日におこなわれた総理会見で五輪問題を問われた菅首相は、「水際対策、厳しくおこなっています」と現在進行形で明言したのだが、実態は、感染が急拡大しているインドを水際対策強化対象国に含めることを決定したのは、なんと4月28日になってのこと。しかも、これまで入国時はPCRよりも精度が劣る「抗原検査」のみだった。
また、昨晩放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に出演した政府分科会メンバーの小林慶一郎氏は、「一応、きょうから検疫は強化されるんですけれども、それでも甘いかもしれない」と指摘。他の国では一般的に入国後は「2週間停留させて健康観察している」のに対して日本は3日間の停留であるのは問題だとしたが、「(3日間の隔離期間を)2週間にすべきではないかと私も政府に申し上げたが、これからどうなるか、検討されるかどうかもわからない。3日間の措置だけでしのごうとしているという状況」と語った。