五輪中止のケースを追及した江川紹子の“更問い”を小野日子・内閣広報官が阻止
しかし、この回答になっていない回答のあと、「関連で(質問したい)」と声をあげた者がいた。ジャーナリスト・江川紹子氏が東京五輪問題について“更問い”をしたのだ。
「いま、総理は五輪について『IOCが権限を持っている』とおっしゃいました。しかし、IOCは日本国民の命や健康に責任を持っているものではありません。そういう観点で、そしてしかも総理はスピーチで『事態はまったく予断を許さない』とおっしゃいました。尾身(茂)会長からも『リバウンドは必ず来る』というようなお話もありました。そういうなかにですね、なんとかやりたいというのはすごくわかるんですけれども、どのような状況になったら中止もやむを得ないといった判断基準のようなものは総理のなかにあるんでしょうか。あるとすればそれはなんでしょうか。これをお伺いするのは、それが国民の安心につながるからだと思います。
そしていま、海外からの観客は来ないというふうにおっしゃいましたけれども、オリンピック委員会や競技団体の関係者、そして多数の報道陣が世界中から来ることが考えられるわけです。こういう人たちによって、新たな変異ウイルスが持ち込まれない、あるいはそれが拡がらないというための対策はどのようなことを具体的に考えていらっしゃいますでしょうか」
江川氏の指摘はそのとおりで、実際、IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長は4月14日におこなわれた国際通信社などを対象にしたオンライン取材のなかで「大会前後や大会中のCovid(新型コロナ)への対処は日本政府の責任であり、程度は下がるが東京都の責任になる」とはっきり明言している(NumberWeb18日付)。このようにあからさまに責任を放棄している組織を、菅首相は「権限を持っているのはIOC」などと言って開催強行の盾にしているのである。まさに恐怖しかないだろう。
しかも、感染拡大したときの責任はすべて日本政府、菅首相にあるにもかかわらず、江川氏がこのあと具体的な感染防止対策を訊いても、菅首相は「水際対策を厳しくおこなっています」だの「(選手らの)行動についてもしっかり抑制する」だの、曖昧な話ばかり。またしても、「どのような状況になったら中止するのか」という「判断基準」については語ろうとしなかったのだ。その上、この回答に対して江川氏が更問いをしようとしたところ、司会を務めている小野日子・内閣広報官が「自席からの質問は避けて」と質問をシャットアウトしたのである。