専門家の解除基準を無視し、菅政権に忖度してIOCバッハ会長来日前に緊急事態宣言解除を
だが、こうした状況を生み出しながら、吉村知事にはいまだに反省の色は見られない。というのも、明日にも政府が正式決定するとされている緊急事態宣言の「解除基準」について、専門家から厳しい目安を突きつけながらも、それをスルーしているからだ。
20日におこなわれた大阪の新型コロナ対策本部会議では、府の対策本部専門家会議の座長である大阪健康安全基盤研究所の朝野和典理事長が現状の医療提供体制に強い危機感を表明し、緊急事態宣言の解除基準について、こう言及した。
「(使用中の)重症病床を20床まで落として(から解除して)ほしい。前回、第3波のときは50床まで落として、また急激にのぼってきた。2波のときのように20床まで落とすぐらいの気持ちでやっていただきたい」
じつは、朝野座長は吉村知事が緊急事態宣言の解除を前倒し要請すると言い出した際も「これまでの経験から、重症病床は20床(使用率9%)以下までの減少が望ましい」と語っていた(日本経済新聞2月22日付)。しかし、吉村知事はこうした専門家の警鐘も無視し、重症病床使用率が46.2%(2月22日時点)と高い水準にありながら宣言解除を要請し、いまの状況を招いた。吉村知事がこのことを反省しているなら、今度こそこの警告に耳を傾けるはずだ。
しかし、21日の会見で記者からこの重症病床使用率の解除基準について質問がなされると、吉村知事は「現時点で発令もされていないようななかで、こうなったら解除しますというのは、現時点で言うのは適切ではない」と言い、明言を避けたのだ。
もちろん、吉村知事が解除基準について明言しなかったのは、その水準に達するまでどれだけの時間がかかるかが見通せず、「国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が来日する5月17日までに解除」という菅義偉首相の方針にも、経済活動を優先させたい自身の思惑にも足かせとなるからだ。ようするに、いまだに人命よりも、経済や菅首相との関係を優先させようというのである。
「社会崩壊」させても無反省のまま──。大阪でいま起こっていることは、まさしく紛うことなき「人災」だ。
(編集部)
最終更新:2021.04.22 09:26