変異株の急増でも検査数は少ないまま、子どもへの感染拡大が起きてもまともな対策なし
コロナ対策の陣頭指揮に立つ人間の、この他人事感……。しかも、宣言解除で急拡大を招いたいまは、もはや時短はおろか、「まん防」だのと言っているような状態ではない。まん防は緊急事態宣言を出したくない菅政権が“やってる感”のために新設したにすぎないシロモノだが、まん防にしろ緊急事態宣言にしろ、その中身は飲食店を狙い撃ちしたものでしかない。しかし、宣言発出下でも東京都が1日たりとも新規感染者数を100人以下に抑え込めなかったことを考えれば、こうした対策内容では不十分なのは明白だ。
その上、大きな問題なのは、肝心要の「変異株の確認数」だ。政府の方針では変異株の検査数を今後40%程度に引き上げる方針だというが、40%という数字には科学的根拠は何もなく、たんに100%おこなえる体制が整っていないだけ。しかも、厚労省の資料「変異株スクリーニング検査の実施状況」(3月15日〜21日、速報値)によると、全国の新規感染者8914人に対し、変異株PCR検査の実施件数は2378件。いまだ40%には程遠い状態なのだ。
また、懸念されているのが子どもへの感染拡大だろう。厚労省の資料によると、年代別の変異株確認数がもっとも多いのは40代だが、次いで多いのが10歳未満。子どもから親・祖父母へ、親や祖父母から職場、高齢者施設へと感染が広がることを阻止するためには、飲食店だけを狙い撃ちにした対策とは違う、新たな対策が不可欠になってくるだろう。
つまり、感染拡大を本気で食い止めようというのなら、検査体制の拡充はもちろん、さらなる変異株スクリーニング検査の拡大、学校などの施設における新たな感染対策など、打ち出すべき対策が山ほどある状態なのだ。
だが、菅首相が「まん防」実施とともに新たに打ち出した対策は、「区域内のすべての飲食店を見回り、必要に応じてアクリル板などの対策をチェックする」というもの。この期に及んで、大切な予算や人員を「すべての飲食店の見回り」に割かせようというのである。