川淵氏も「小池さん、菅総理や安倍さんとも話して『川淵さんならいい』と言われた」と発言
実際、川淵氏は11日にメディアの取材に応じた際、「外堀が埋まっていて断るような状況じゃなかった」とし、こう語っていた。
「もう、森さん『とにかく後を任せるには川淵さんしかいない』と。で、まあ、たとえば小池さんと話して、菅総理やら安倍さんとか、あと誰だっけ、みんな話して……あと武藤(敏郎)事務総長。『川淵さんならぜひいい』というふうなことで。菅さんあたりは『もうちょっと若い人はいないか』とか、当然の話だよね、それは。そういうことを言わないとおかしいと思うんだけど、『女性がいないか』って話はあったって聞いている」
「手落ちなくいろんな人の意見を聞いて『川淵でいこう』ということを言っていただいたんでね」
ようするに、安倍前首相はもちろん、菅首相も「若い人」「女性」と提案をしながら、最終的には森会長の人事案を容認していたのである。
ところが、前述したように、川淵氏が正式発表前に後任会長受諾をマスコミに喋り、国内の世論や海外メディアからも批判の声があがり始めたため、菅首相は慌てて方針を転換。後任人事を白紙にするよう働きかけた。
実際、御用メディアのフジテレビなども、菅首相や官邸が一旦、川淵後任人事を認めながら、方針転換して白紙撤回した舞台裏をこう報じている。
〈森会長の進退など、組織委員会の人事について、菅首相の周辺は数日前、「これ以上言うと人事介入と言われる」と話すなど、一定の距離を取ってきた。
そうした中で、森会長が辞任して、後任に川淵氏を指名したが、当初は好意的な空気だった。
しかし、自民党内などから、「もめごとを起こした森会長が、後任の指名にからんではダメだ」、「女性も含め、国際的にも歓迎されるようなプロセスで決めてほしい」という声が高まってきた。
そして12日午後、菅首相も周囲に対し、「国の内外で批判がある中で、女性の起用や世代交代をしないと変わったという印象を持ってもらえない」と川淵氏の起用を見送りたい意向を示す中、一気に起用白紙の流れになった。〉(FNNオンライン12日付)
さらに、菅首相の意を受けた加藤勝信官房長官が、組織委の武藤敏郎事務総長に白紙撤回を申し入れたという報道もある。
グロテスクな「男の絆」に基づいた定款違反の密室禅譲劇が白紙に戻ったことは、あまりにも当然とはいえ、歓迎すべきことだ。しかし、それでも看過してはならないのは、これほどまでにジェンダー平等が遅れていると批判に晒されているなかで、現役首相や前総理、開催都市のトップが「男同士の密室の禅譲劇」を是としていたことである。
しかも、もし川淵氏がメディアに喋らなければ、この密室談合はそのまま進行し、正式に決まっていた可能性が高い。
森会長が辞任したところで、問題の根本はまったく変わらない。いや、それどころか「変わろう」ともしていないことが、この後任人事問題で浮き彫りになったと言うべきだろう。
(編集部)
最終更新:2021.02.13 08:01