森は日本の密室談合政治の象徴 首相になるときも組織委会長になるときも密室で
そして、組織委会長就任後も数々の失態・不祥事が発覚しながら、森氏は会長の座に居座り続けてきたが、これも安倍前首相のバックアップがあったからだった。たとえば、新国立競技場の建設費高騰問題をめぐって森会長の責任が問題になったことがあったが、当時の安倍首相が森会長を擁護したといわれている。
「あまりの建設費高騰で、当時の下村文科大臣が、安倍首相に別の案に変更を進言した際も、安倍首相から『森さんの了承を得ないと無理だ』と言われ、その結果、変更は実現しなかった。とにかく、安倍首相の森さんへの気の使いようは尋常ではなく、五輪については全権委任という状態だった。その空気が五輪担当相や文科省、組織委にも広がっていますから、解任なんてできるはずがなかった」(前出・全国紙政治部記者)
これ以外にも、エンブレム問題や神宮外苑地区の再開発利権疑惑、招致をめぐる賄賂疑惑など数々の問題が発覚しているが、森会長は一切責任を取ることなく、その座に居座り続けてきた。
しかし、なぜ、安倍前首相はそこまで、森首相に弱かったのか。
「安倍さんはかつての森派、清和会出身で、第二次森内閣で官房副長官に引き上げられた、いわば直系の子分さんですからね。当然、金銭的にもかなり世話になっているし、いろいろ弱みも握られているんでしょう。とにかく、森さんには絶対逆らえませんよ」(政治評論家)
もっとも森元首相に甘いのは、安倍前首相に限った話ではないだろう。橋下徹・元大阪市長は今日の『ゴゴスマ』で「森さんの政治力は絶対に必要」などと評価していたが、森喜朗の政治力などというのは、裏で会食したり利権を分配したり恫喝したりと、homosocialな人間関係のなか、談合のような形で物事を決めることだ(菅首相の人心掌握術とやらも同類だろう)。民主的な議論や手続きとはまったく関係ない話だ。
思えば、森会長の首相就任も小渕恵三首相急死という混乱のなかで密室の談合によって生まれたものだったが、組織委会長就任も都知事の不祥事をめぐる混乱の隙をついてなされたものだ。
そういう意味では、森会長は日本の密室政治の象徴と言ってもいい。今回、森会長がオープンな議論を求める女性を「話が長い」「話す時間を制限しろ」などと言ったのは、女性差別であると同時に、民主的で透明性のある議論を排除して、密室ですべてを決めたい、自分の言うことを聞く男たちで理事会を固めたいというその政治手法がもろに出たものと言ってもいい。
しかし、この密室談合体質は森会長一人の問題ではない。こんな差別男を五輪の組織委会長というポジションにつかせた安倍前首相や官邸、政府、そして女性理事4人以外は理事会の密室化に全員が賛成したJOCの理事たちの体質でもある。
だからこそ、これだけ国内外から批判を浴びてもJOCも政府も森会長に辞職勧告すらできず、そのまま会長の座に居座ることを許そうとしているのだ。もしこのまま放置するようなことになれば、それこそ日本がいかに女性差別の許されている国か、homosocialな密室談合によって、物事を決めている国であるかを全世界に発信することになるだろう。
(田部祥太)
最終更新:2021.02.04 10:21