河野大臣「マイナンバー使う接種管理システム」を言い出し、政府や自治体が大混乱
しかも、仮に菅首相の言うとおり、今月中旬から医療関係者へのワクチン接種をスタートできたとしても、その後の高齢者や基礎疾患のある人、そして一般の人への接種がうまくいくかはまったく見通しが立っていない。
菅首相は会見で「先日、3社から3億1400万回分の供給を受ける契約の締結に至った」「高齢者については4月から接種を進めます」と明言したが、周知のとおりEU(欧州連合)は輸出規制に動き出すなど「ワクチン囲い込み」が激化。その上、米モデルナ社と英アストラゼネカ社のワクチンにしても、3日付の時事通信記事では政府関係者が「実際に使えるのは7月以降になる」と語り、〈治験データに不備などが見つかれば、さらにずれ込む可能性も否定できない〉と伝えている。医療従事者等には約400万人分(約800万回分)、高齢者には約3600万人分(約7200万回分)のワクチンが必要だが、果たしてこれだけの数が菅首相の言う4月に確保できるのかは不透明な状況だ。
さらに、問題はワクチンの「確保」だけではない。
河野大臣はワクチン接種の情報管理について、マイナンバーを使い接種記録をリアルタイムで把握できるシステムづくりを進める考えを示しているが、厚労省は自治体への流通管理システムを準備中。ようするに、ここにきて新たなシステム構築という“突貫工事”がはじまったのである。
このマイナンバー活用に対しては、全国市長会から「自治体の事務が増えることは非常に困る」と懸念の声があがり、世田谷区の保坂展人区長も「今頃になってシステムの話をするのは、あまりに遅い」と批判をおこなっているが、まさしくそのとおりで、ここでも政府対応は後手後手としか言いようがない。
にもかかわらず、菅首相は昨日の会見でワクチン接種について「海外に遅れていることは事実」と認めながらも、「(接種が)始まったら世界と比較をして、日本の組織力で、多くの方に接種できるようなかたちにしていきたい」などと言い放った。検査や医療提供体制を見ても、この1年間、政府は「組織力」を何ひとつ発揮できていないのに、何を言うか、という話だろう。
まったく失笑するほかないが、「国民のために働く。」などと当たり前のことをキャッチコピーに掲げながら、結局、菅内閣はワクチンの問題でも「全然、仕事ができない」実態を露呈させているだけなのである。
(水井多賀子)
最終更新:2021.02.03 08:56