税金から「運営費交付金」を交付されている国立大学附属病院は政治家に逆らえない
もうおわかりだろう。東京医科歯科大学附属病院は昨年9月、コロナ外来診療センターを開設するなど積極的にコロナ診療に取り組み、国内では先進的な治療を行なっている病院のひとつといわれているが、石原氏は「国会議員としての視察」でそのことを知っていたのだ。
石原氏の入院のニュースが報道された際、その検査・入院先が石原家と縁の深い慶應病院でなく、国立大学病院だったことに一部で驚きの声が上がっていたが、ようするに、石原氏は昨年の「視察」で東京医科歯科大学附属病院のコロナ診療への取り組みを知り、コネクションができていたから、同病院を選んだのだろう。
つまり、病院の選択じたいが「視察」という国会議員の特権から派生していたわけだが、もっと問題なのは、石原氏が政治家と国立大学病院の間にある構造的な力関係を利用して、即検査・即入院したとしか考えられないことだ。
国立大学の附属病院には税金から「国立大学法人運営費交付金」と「附属病院運営費交付金」が交付されるが、その金額は文部科学省に置かれる「国立大学法人評価委員会」などの評価で増減される。全体の予算がどんどん縮小されているなかで、各大学病院はこの運営費交付金の確保に必死になっている。
だからこそ、東京医科歯科大学附属病院は、石原氏らの「視察」を受け入れ、それをHP でアピールしていたのだ。
政治家は直接的にこの交付金額決定に関与しているわけではないが、政権与党の重鎮政治家なら官僚を通じて政治的な影響力を行使することは十分可能だ。ましてや、石原氏は大学病院の評価を左右する可能性もある「視察」を行っているのだ。そんな人物から検査や入院を要求されたら、それが通常のルールを逸脱するものであっても、病院側は断れるはずがない。
入院については石原氏側が言い出したのではなく、病院側が忖度した可能性もあるが、だとしても石原氏はそれが自らの視察と、権力関係が背景にある特別扱いであることは十分自覚していたはずだ。そして、検査は石原氏側が要求していないのに、病院側が「検査しませんか」などということは考えられない。
そういう意味では、石原氏の今回の検査・入院は明らかに、病院を視察した国会議員という立場を利用したもの、さらに、結果だけ見れば、国立大学附属病院に税金が投入されているという構造を利用して自分の治療を優先させたと言えなくもない。
繰り返すが、本来は、コロナ感染者が検査や入院ができたことを責めるのでなく、むしろ全国民がスムースに検査を受けられ、既往症のある人は全員が入院できる態勢を求めていくべきだろう。
しかし、石原氏のケースはそういう問題ではない。田崎氏が擁護の論理で持ち出しているような「民間の病院に知り合いがいたから」というレベルの話でもない。多額の税金が投入されている国立大学医学部の病院を、視察していた国会議員が優先的にその病院で検査を受け、無症状で入院しているのだ。
その経緯について、徹底した検証と追及が必要だろう。
(編集部)
最終更新:2021.01.26 01:32