43人の死者を出した永寿総合病院の院内感染は小池百合子知事の責任が大きい
同病院で集団感染が始まったのは3月14日ごろとされているが、湯浅院長は会見でこの時期には症状だけで感染を疑うことが難しかったこと、さらにPCR検査もすぐに受けられる状態ではなかったことなどを院内感染の原因として挙げたが、そんなことはけっしてない。その実例が、国内初の院内感染が発生した和歌山県の済生会有田病院であり、和歌山県の仁坂吉伸知事の判断だ。
実際、仁坂知事は2月13日に済生会有田病院での感染確認例を発表すると、症状があるかどうかにかぎらず病院関係者全員のPCR検査を決定。政府は2月17日に「37.5度以上の発熱が4日以上」などという基準を示していたが、仁坂知事は「早期発見が重要。国の基準に従わない」(2月28日)と言い、独自の検査体制を実行。県内の検査機関で可能な検査数は通常時で1日80件程度だったが、大阪府にも協力を要請し、600人以上もの検査を実施したという。その結果、和歌山は見事に抑え込みに成功したのだ。
つまり、永寿総合病院の院内感染がはじまる約1カ月前にすでに和歌山では知事の判断で徹底したPCR検査がおこなわれ、封じ込め策がとられていた。同じように、永寿総合病院の院内感染が確認されたときに小池都知事が強いリーダーシップを発揮することはできたはずなのだ。しかし、それがなかったために、死亡者43人という最悪の結果を招いたのではないか。
さらに、東京都が医療崩壊を起こしていたことは数々のデータからも明らかだ。
たとえば、東京都では5カ所以上の病院から受け入れ拒否され搬送先が決まらないケースが3月に931件、4月1〜25日では1919件も起こり前年同期を大きく上回っていたことがわかっている。また、東京都の4月の死亡者数は平年の平均より1056人も増加。4月の東京都における新型コロナの死亡者数は104人だと報告されているが、1000人を超えるこの「超過死亡」は、PCR検査で感染が確認されていないコロナによる死亡したケース、もしくはコロナの影響で通常なら受けられる医療が受けられず死亡したケースだと考えられる。
しかも、こうした医療崩壊を引き起こしていた一方で小池都知事が何に熱心になっていたかといえば、自身のPR戦略だ。
実際、新型コロナ対策と称して小池都知事は人気YouTuber・HIKAKINの番組に出演したり、「東京都知事の小池百合子です」という挨拶からはじまるテレビCMを大量に放送。こうした広報費は総額14億円にものぼると報じられたが、「週刊文春」(文藝春秋)4月23日号によれば、小池都知事出演のテレビCMについて民放の一部の局が都知事選の告示2カ月前となる4月18日以降の放送に難色を示したという。結果としては小池都知事が出演しないバージョンのCMが放送されたが、当初は小池氏が出演しないCM制作を打診したものの〈東京都はそれを頑なに認めようとしない状況〉だったというのである。
都民の健康や安全よりも東京五輪や都知事選を優先し、自分のPRを主眼においた広報に税金を14億円も注ぎ込む──。これこそが、小池都知事の「新型コロナ対応」の実態なのである。
だが、その実態が都民にしっかり認知されていない。現に、大阪府の吉村祥文知事と並んで小池都知事は「リーダーシップを発揮した知事」などと呼ばれているからだ。しかし、それは吉村知事と同様、メディアに積極的に登場して「やってる感」を演出していただけなのだ。繰り返すが、都民の税金を14億円も使って、である。
はっきり言おう。小池都知事の新型コロナ対応には評価できる点がまるでないばかりか、さらにいまも最悪の道を進もうとしている。それは安倍首相とまったく同じで、小池都知事もまた、自分のことしか考えられない為政者だからだ。それでもまだ、都民は小池氏を信任しようというのだろうか。
(編集部)
最終更新:2020.07.02 01:49