水原希子攻撃の背景にあるミソジニーと在日コリアン差別
本サイトでも何度か指摘してきたが、日本のネット空間では、日本の男尊女卑社会を濃縮反映して、女性、とりわけ「物を言う女性」が叩かれる傾向が強い。たとえば、社民党の福島瑞穂参院議員や立憲民主党の辻元清美衆院議員、蓮舫参院議員をはじめする野党女性議員や、性被害を実名で訴えたジャーナリスト・伊藤詩織氏や#KuToo運動の石川優実氏、辺野古新基地や環境問題に声を上げるローラなど、社会の現状に対して異議申し立てをする女性たちが日常的に苛烈な攻撃に晒されている。水原に対する攻撃も同様で、明らかに「物を言う女性」が気に食わないという女性蔑視、ミソジニーが背景にある。
くわえて、水原やローラ、蓮舫議員は、外国にルーツがあることも攻撃対象となっている。水原の場合は、在日コリアンのルーツを持つことで、さらなる苛烈な攻撃を受けている。
発端となった一般ユーザーのツイートにも、上述したネトウヨ文化人たちのツイートにも、「在日」「コリアン」「韓国」「朝鮮」などという言葉は一切ない。しかしこれらは、水原が、在日コリアンにルーツを持っていることをターゲットにした攻撃だ。
それを表すのは、彼らが水原の「名前」を問題にしていることだ。「日本人感」という一見、何を言っているの?という言葉も、水原のスタイルやファッション、言動のことではなく(その表現もどうかと思うが水原のそれらはどちらかといえば「日本人離れ」していると形容されるものであろう)、暗に「名前」のことを想起させているのは間違いない。実際「日本人感」ツイートに端を発して、水原を攻撃している者には「名前」をあげつらっているものが数多くある。
そもそも日本の芸能界では芸名で活動している芸能人は山ほどいるが、ネトウヨたちはいちいち「嘘つき」などと攻撃して回っているわけではないだろう。だいたい日本の芸能界で芸能人として活動する際の名前は、本人の意志より所属事務所の意向が大きい。とくに外国にルーツを持つ芸能人でも日本語風の芸名でデビューさせられてきた例はめずらしくなく、外国にルーツを持つことを積極的に公表させない事務所も少なくない。最近でこそ“ハーフタレントブーム”があり、外国風の名前をあえて芸名にする例も増えてきたが、それも欧米の白人系の場合が多く、フィリピンなどアジア系に対してはいまだ蔑視の風潮が強い。
在日コリアンの場合は、それ以上だ。古くから日本では、在日コリアンや在日コリアンのルーツを持つ芸能人は少なくないが、多くがその出自を明かしてこなかった。しかし、それは本人の意向というより、事務所サイドから強制されてきたものだ。実際、過去に在日コリアンである出自や名前を公表しようとした芸能人が事務所に反対されたケースもある。背景にあるのはもちろん、日本の芸能界というより日本社会全体の差別意識によるものだ。
そして在日コリアンをめぐる差別で必ずあげつらわれるのが「名前」だ。