厚労省公式Twitter
感染拡大の重大局面に立っているなか、またも安倍政権がメディア圧力に乗り出した。3月に『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)を名指しして番組内容に反論したものの、逆にそれがデマであることを『モーニングショー』が暴き、訂正に追い込まれた厚生労働省だが、その厚労省の公式Twitterアカウントが、昨晩20時8分、またもこんなツイートをおこなったのだ。
〈ヤフーニュースなど、インターネットニュースサイトで、「補償なき休業要請」との報道があり、外出自粛や出勤者の最低7割減は、休業補償がないと不可能だと報じられていますが、正確ではありません。〉
「ヤフーニュースなど、インターネットニュースサイト」という説明なので、どの記事がターゲットになっているのか判然としないが、じつは「ヤフーニュース」の内のひとつである「Yahoo!個人」では、このツイートがなされた同日の朝、貧困問題に取り組む社会福祉士の藤田孝典氏による「安倍総理大臣「出勤者を最低7割は減らして」だから今の貧弱な休業補償では無理だって何回言えばわかるの?」と題した記事が配信されている。今回、厚労省がターゲットとしたのは、この藤田氏の記事のことではないか。
また、さらにいえば、「Yahoo!個人」では藤田氏以外にも、雇用・労働政策研究者でNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏や、日本労働弁護団常任幹事である嶋崎量弁護士らによる、政府による補償の不備や問題点を指摘する記事が多数配信されている。もしかすると、今回厚労省はこうした労働問題の専門家である筆者による記事をターゲットにしているのかもしれない。
だが、問題は厚労省の反論だ。厚労省は〈正確ではありません〉とデマ呼ばわりした上、〈正しくは以下のとおりです〉とし、このような投稿を連投した。
〈事業主が労働者を休業させた場合に支払われる休業手当には、政府が助成をしています。新型コロナウイルスへの対策として特例を講じ、この助成率を、中小企業向け最大90%、大企業向け最大75%と、引き上げました〉
〈これにより、事業主の負担が大幅に軽減されますが、さらに手元資金を厚くするため、無担保・無利子で最大5年間据え置きの融資を政府系金融機関で実施しています。民間金融機関でも、債務の返済猶予などの条件変更に応じています。〉
〈また、大きな影響を受けている中小企業等に最大200万円、フリーランスを含む個人事業主に最大100万円といった、過去に例のない給付金を準備中です。〉
〈政府は、事業者の資金事情を支えるための助成を実施しており、事業者がこれを活用して、従業員に休業補償を十分にできるような雇用調整助成金の特例制度も始まっています。是非ご活用ください。〉
つまり、休業手当を国が助成する「雇用調整助成金」や、中小・個人事業主への現金給付制度を活用できるのだから、「補償なき休業要請」ではない、と主張しているのである。
だが、この厚労省の反論は、まったく反論になっていない。いや、はっきり言って「デマ」だ。
そもそも、ターゲットにされたと思われる藤田氏の記事では、「政府も施策を講じている」として、厚労省が書き連ねた雇用調整助成金や中小・個人事業主向け現金給付についてしっかり触れている。その上で〈相変わらず「補償なき自粛要請」〉だと言っているのだ。
そして、この指摘は全面的に正しいものだ。