安倍政権擁護のお笑い芸人が跋扈するなかで『笑点』が存在することの意義
落語や笑いというのはもともと、民衆が権力を茶化し、笑い飛ばすというのが本分だったはずだ。実際、以前のお笑い番組には、政治家や政府を揶揄するようなギャグ、風刺などが普通に盛り込まれていた。それが、この程度の政治風刺で「偏向」などと攻撃されて炎上する状況になってしまったのだ。
この状況はもちろん、安倍政権と安倍応援団の圧力がもたらしたものだ。第2次安倍政権以降、政権批判報道だけでなく、バラエティからも政治風刺がどんどん少なくなり、政権批判をするようなタレント・芸人は「芸人風情が政治を語るな」「偏向タレントを出演させるな」という攻撃を受けて、テレビから干されるようになってしまった。
そして、逆に安倍政権を擁護するお笑い芸人が跋扈し、情報番組のMC やコメンテーターにやたら起用されるようになった。落語界からも、野党批判を連発し安倍政権をアシストすることで有名な立川志らくがワイドショーのMCに抜擢された。
円楽のネタはこうしたメディア状況、言論状況への危機感表明でもあったのではないか。
今回も『笑点』や円楽には、「落語家のくせにえらそうに政治を語るな」「面白くもなんともない、笑えないネタをやるな」などという非難が浴びせられるかもしれない。
たしかに、今回の円楽の「日本は本当に民主主義国家ですか?」という問いかけは笑えない。しかし、いま、テレビのお笑い番組でこの「笑えない」言葉を発することには、想像以上に大きな意味があるはずだ。
(本田コッペ)
最終更新:2020.02.02 08:24