森喜朗が東京五輪で引き起こしたトラブルと、私物化疑惑を一切追及せず
彼らは森がこの東京五輪をめぐって何をやったか知らないのか。東日本大震災の復興を妨害する五輪誘致を強行した中心人物だったのはもちろん、誘致決定後に起きた開催準備や会場建設のトラブルの多くは、森会長の独裁が大きな原因になっているのだ。
たとえば、2015年に発表された五輪エンブレムのパクリ問題もそうだ。組織委の発表によれば、問題になったエンブレムのデザインは2回修正されていたという。1回目の修正は商標登録上の問題だったが、2回目の修正の理由は「デザインに躍動感がない」というもので、この2回目の修正指示により、ベルギーの劇場のロゴに似てしまった。この2回目の修正指示が、デザインになんの見識もない森喜朗会長によるものだったことが、NHK『クローズアップ現代』の報道により明らかになっている。
新国立競技場のザハ氏設計案をめぐるゴタゴタも同様だ。予算が膨大にかかるザハ案を選定した事実上の責任者が森会長だったのはもちろん、このプランは国民からの強い批判を受け2014年5月の段階で1625億円まで圧縮することになっていた。ところが、森会長が中心となって、ザハ案のまま進めることをゴリ押し。「価格についてはここまで圧縮され、私は妥当だと思う」などとでたらめな論理を駆使して、総工費を2520億円に増額してしまった。その結果、さらに巨額の建設費がかかることが明らかになり、土壇場で設計者を変更するというドタバタ劇が起きたのである。最終的には1569億円で完成したというが、それでも当初予算の1300億円や北京五輪の430億円、ロンドン五輪の650億円を大きく超えている。
ほかの競技会場建設でも、森会長は予算を無視して、新規会場建設や大幅改修をゴリ推し。五輪の開催費用は最終的に、当初予算の約7000億円の4倍以上の3兆円を超えるのは確実といわれている。
しかも、こうした森喜朗の会場建設ゴリ推しの裏には、大手ゼネコンや不動産会社との癒着があるとも指摘されている。もともと森会長は、新国立競技場などの建設を受注した大成建設とのつながりが深く、後援会の会報にも同社の広告が掲載されているほどの関係だが、新国立競技場や森会長が建設見直しに反対しゴリ押しした「海の森水上競技場」は、99.99%という異例の価格で大成建設のJVが落札していた。東京五輪関連の工事では、99.99%の落札率や1者入札が相次ぎ問題になっている。
また、新国立競技場については、新規建設にあわせて周辺の神宮外苑再開発プロジェクトが持ち上がり、高さ規制の緩和がされているのだが、神宮外苑再開発プロジェクトをもともと仕掛けた不動産フィクサーは森の大学時代からの親友といわれる人物。この人物からの協力依頼で、森が電通や大手ゼネコンを巻き込んだ一大プロジェクトして発展させたといわれている。
他の五輪ビジネスでも、森喜朗会長が仕切っているとか、森会長のOKがでないと参入できないという声は聞こえてきており、予算が4倍超になった裏で、森会長が五輪を利権化している疑いはいまも否定できない。
ところが、この日の『ワイドナショー 年末スペシャル』では、こうした疑惑はもちろん、五輪のトラブルをめぐる森会長の責任論すら誰もツッコまなかった。