局内のトイレ検証に続き、LGBTQのディレクターの声を紹介したNHK新番組
インタビューを受けたのは、2名の現役NHKディレクター。職場ではカミングアウトしていないのでボイスチェンジャーは使っているものの、ありがちなモザイク加工ではなく、動物の着ぐるみを着てカメラの前に立った。
「女性で女性が好きなレズビアン」と自身の性を認識している20代ディレクターは「みなさん『うちの職場にはいないよね〜』みたいな感じのことが多いので、おーい、ここにいるよ〜みたいな気持ちになったりとかはあります」と日常で感じたことを吐露。また、「メインはゲイ、ときどきB(バイセクシャル)やQ(クエスチョニング=性的指向や性自認が明確ではない)になるのを感じる」という20代ディレクターは、トイレについてこのように話していた。
「パーテーションがないのがすごく気になってしまって、基本的に個室にはいるようにしてます」
「(個室が)空いてないときもあるじゃないですか。オンエア前とかで行きそびれたときとかもあって、(スタジオの)卓の前に座りながら気もそぞろというか」
「『いろんな人がいるよね、自分はこうだけども』ぐらいの感じで、みんなが生活できるようになると、このジェンダーをめぐる問題も変わってくるのかな」
この動画をつくったのはNHKの報道カメラマンだ。職員へのインタビューだけでなく、NHKの個室トイレ42カ所にアンケートを設置して調査もしている。それによれば、「男性用トイレにサニタリーボックスがほしい」という声が6件、「性別関係なく使えるようなトイレがほしい」という声も116件集まったという。
あえて局内の、それも、カミングアウトしていないLGBTの人たちに取材をし、それを放送するというのは、かなりチャレンジングだし、番組づくりとして画期的とさえ言えるだろう。なぜならば、視聴者にとって抽象的な「性的マイノリティ」ではなく、具体的に職場や学校などで日常的に接している人たちのことを想像させるからだ。
LGBTQをめぐっては、いまだにネット上や社会生活での偏見・差別がはびこっているのはもちろん、民放テレビ局でも相変わらず「ネタ」にして笑い者にするという状況がなくなったとはいえない。
政治に目を向けると、自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌で「LGBTは『生産性』がない」と剥き出しの差別言辞を繰り出したり、やはり自民党の平沢勝栄衆院議員が「この人たちばっかりになったら国は潰れちゃう」と集会で発言するなど、安倍政権はむしろ多様性を否定するように前時代の父権主義的価値観を押し付け、LGBTQ当事者たちへの差別を扇動すらしている。事実、安倍首相は昨年の参院選時に行われた党首討論で、「LGBTの法的な権利を与えるというのを認めるという方」という記者からの質問に対し、手を上げず「イエス」の意思表示をしなかった。
そうしたなかにあって、NHKという大きな影響力を持つメディアが、『紅白歌合戦』などの番組でLGBTQをフィーチャーし、「様々なセクシュアリティと多様性を認める社会」というメッセージを発信していることは、繰り返しになるが、この社会を改善させるきっかけになりうる。政治報道では安倍政権を忖度した内容ばかりが目立つNHKだが、年末番組で見せたような取り組みには、本サイトとしてしっかり拍手を送っておきたい。
(編集部)
最終更新:2020.01.03 02:59