質問はあらかじめ決められ、他の記者が手を上げても指名せず! 総理会見は出来レース
しかも、つづいて質問したもうひとつの幹事社であるテレビ東京の記者がようやく「桜を見る会」の質問をおこなったのだが、その答えは「招待者名簿については、内閣府があらかじめ定められた手続きにのっとって適正に廃棄をしている」「データの復元についても不可能」「(ジャパンライフ会長とは)1対1のようなかたちでお会いしたことはない」という、これまでとまったく同じ回答を繰り返しただけ。
だが、問題はこのあとだ。この国民を舐め切った回答に対し、記者から追加で質問が出ることもなく、つづいて指名されたブルームバーグ記者は「日中関係」、次に指名されたNHKの記者は「衆院解散」について、その次のニコニコ動画の記者は「若い世代の投票率の低さ」、そして読売新聞の記者が「自衛隊の中東派遣」を質問し、会見は締めくくられたのだった。
いま、これだけ「桜を見る会」の問題が取り沙汰され、一方で安倍首相はその説明から逃げつづけているのに、それについて厳しく追及する質問が飛ばず、挙げ句、「若い世代の投票率の低さ」などという「いま訊くべき話か?」というような質問が繰り広げられる──。たしかに安倍首相のこうした正式な会見では、回答に関連して追加で質問する「更問い」はおこなわれないのが慣例となっているが、法律で禁じられているわけでもないのだからそんなものは打ち破ればいいだけだ。しかし、そうしたことはついに起こらなかった。
いや、それどころか、安倍首相は記者からの質問に対し、しきりに目を落とし、手元の原稿を読んでいる様子だった。つまり、事前に記者からどんな質問をするのかをあらかじめ聞き出して問答集をつくっていた可能性が高いのだ。
最近の菅義偉官房長官の会見では、朝日や毎日、東京、北海道新聞などの記者が奮闘し、鋭い質問を浴びせているが、一方、安倍首相の昨日の会見は官邸側が選んだ記者にだけ質問させていたのではないか。現に、今朝の毎日新聞デジタル版記事では、会見に参加した取材班が〈我々は一度も指名されずじまいである。思えば、司会の官邸職員、自分が名前を知っている記者しか指名していない〉と“出来レース”疑惑を匂わせ、朝日記者は本日朝刊で〈朝日新聞の記者は手を上げ続けたが指名されなかった〉と書いている。これを「茶番劇」と言わずしてなんと言おうか。
しかも、昨日の会見がおこなわれるとメディア側に正式にアナウンスされたのは夕方だったという情報もある。実際、総理大臣の公式の会見だというのに、記者席はガラガラだった。これは、安倍官邸側が直前に会見実施をアナウンスして、なるべく記者を排除しようとしたのではないのか。そう疑われても仕方がないだろう。
嘘と大言壮語でしかない一方的な演説と、批判が一切出ない質疑応答──。これでは年越しによって「桜」疑惑を幕引きしようとする安倍首相の思うつぼだ。この会見での無責任な態度を、国民はよく目に焼き付けなければならない。
(編集部)
最終更新:2019.12.10 11:54