「桜を見る会」の説明求める声は無視し、「国民の声は、憲法の議論を前に進めよということ」
さらに、その後におこなわれた質疑応答でも、幹事社である日本経済新聞の記者が1問目から改憲について質問。そして、安倍首相はこう口にしたのだ。
「選挙の結果は、国民のみなさまの声は、憲法の議論を前に進めよということだったんだろうと思います」
「最近の世論調査においても、議論をおこなうべきという回答が多数を占めています。国民的関心は、高まりつつあると考えています」
「国会議員として国民的意識の高まりを無視することはできません」
いやいや、憲法改正に国民的関心が高まっているって、どこの世界の話をしているのだろうか。おそらく「最近の世論調査」として持ち出しているのは、御用メディアであるFNN・産経新聞が11月16・17日におこなった世論調査の結果で、「衆参両院の憲法審査会で憲法改正に向けた議論をもっと活発化させるべきだと思うか」という問いに「思う」が73.3%、「思わない」16.2%となっていた。だが、NHKの世論調査(11月8〜10日)では「憲法改正について国会で議論を早く進めるべきか」という問いに「早く進めるべき」と答えたのが33%である一方、「早く進める必要はない」は32%、「議論をする必要はない」は22%となっていた。つまりNHKの調査では、54%が「早く進める必要はない」「議論する必要はない」という回答だったのだ。
むしろ、国民的関心が高まっているのは、憲法改正ではなく「桜を見る会」のほうだろう。実際、NHKが12月6〜8日におこなった世論調査では、「桜を見る会」問題について「安倍総理大臣のこれまでの説明に納得できるか」という問いに「大いに納得できる」と答えたのはわずか2%で、「ある程度納得できる」と回答した人も15%であったのに対し、「あまり納得できない」が30%、「まったく納得できない」が41%となっており、「納得できない」という回答は71%にものぼっている。
国民の多くが安倍首相の説明に納得がいっていないというのに、その当人は丁寧な説明を放棄……。しかも、会見ではこうも宣言したのだ。
「憲法改正はですね、自民党立党以来の党是でありまして。そして選挙でお約束したことを実行していくことが私たちの責任であろう、政治の責任であろうと思います。憲法改正というのはけっしてたやすい道ではありませんが、必ずや私たちの手で、私自身としては私の手で成し遂げていきたい。こう考えています」
私の手で憲法改正を成し遂げたい……って、憲法改正は自民党と首相の専権事項では断じてないのに、何を言っているのか。その上、これは臨時国会の閉会にともなう総理大臣会見だ。総理大臣としておこなっている会見で「自分の手で改憲を」などと述べることは、憲法99条に規定された「憲法尊重擁護義務」違反であり、国民主権と国会を無視した“独裁宣言”ではないか。